■グエユ置き場■

□グウェンダルのかぎ針
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グウェンダルのかぎ針

元来理系の私は、編みぐるみより、レース編みの方が得意だったりする。
動物のフォルムを作り出すより、幾何学的な平面の図形を編み出していけばいいので、どんな風に出来上がっても可愛いものに仕上がる。
特に かぎ針は手探りでできるので、書物を見ながらでも進めていけるのがイイ。
三日ほど前に 黒くて細いレース糸を仕入れることができたので、帯状のレースを編み続けている。

眞魔国新聞を読みながら編み物をしていると、コンラートがやって来た。
「グウェンダル。陛下は明日眞王廟に戻ってこられるそうだよ。」
「そうか。」
「ところで、そのレースのリボン、色はユーリ向けだけど、何に使うんだい?」
「何でもいい。ただの精神統一だ。」

ーーーーーーーーーーーーーー
1週間ぶりに血盟城に帰還したユーリに待っていたのは、雨が続いていた眞魔国の地域の土木工事に関する緊急の書類があって、私の執務室で缶詰での仕事だった。
「うー、肩凝ってきた〜。でも、緩んだ堤防を早く直しとかなきゃいけないし。もう少しだ、頑張れ俺。」
ぶつぶつ言いながら書類を読んでサインをしている。
「その書類で急を要するものの最後だ。」
「そっかわかった。えっと…。」
最近は仕事もそれなりに早くなってきたし、少しは使える魔王陛下になってきている。とは心の中だけでしか思わないことにしている。
甘やかすのは仕事以外のところでと決めている。
「やったー終わったー バタリ。」
「倒れる音まで口から言うな。」
「えへへ。でも、もう動きたくない。」
「風呂ぐらい入れ。疲れは取れるぞ。明日も仕事はあるからな。」
「うん」
机に突っ伏しながら返事だけしている。
「しょうがないな。」
そう言ってプライベートのユーティリティの方へ


「ほら、ユーリ、風呂の準備できたぞ。もう、ここで入っていけ。」
「ふふ、グウェンダルの部屋でお泊まり〜」
完全に力の抜けきった双黒を抱き上げて一旦ベッドにおろして、学ランとかいう上着から脱がせていく。
服の下はヴォルフラムほどではないが、特に胴などはあまり日焼けをしてなくて白い。まだまだ子供の躰つきだ。
この幼い魔王陛下に我々は随分無茶で過酷なことを強いているとはわかっている。が
初めて召還したときには、もうそうするしか考えつかなかった。
しかし、ユーリ陛下は着実に平和で友好な地域を広げていく。即位してあまり経っていないというのに、その功績は眩しいものがある。

なのに、こうやって私のベッドで無防備に寝ていたら、その可愛らしさについ

「ん っ」

「ん んっふっ」



「わぁー ぐ ググウェンダル 何を。」

「起きたか。」

真っ赤になって口元を手で押さえている。
すっかり起き上がって座っている。

「風呂の準備ができたぞ、入っていけ。」

「あ、うん ありがとう。」

「寝間着は出しておくから。」

「うん。」

ユーリが風呂に入っている間にと、明日片付ける予定の書類の整理をしてしばらくしていると

ペタペタと音がして ユーリが裸足で歩いてきた。
「グウェンダル。本当にこのパジャマなの?」
私が用意したパジャマを着ている。
「黒い服はお前か猊下しか身につけてはいけないからな。」
「たしかに黒いとこあるけどさ、何だよこれ。フリフリ〜。」

ピンク色のサテンのパジャマの、袖ぐりに見ごろとズボンの裾と胸のポケットに 私が編んだ黒いレースのフリルをあしらってもらっている。
ピンクに黒も良い組み合わせだが、ユーリに着せるときしか見ることができない。

「似合っているぞ。」
本音を言ったのに、双黒はたちまち真っ赤になって
「グウェンダル、久しぶりの悪趣味だよ。」
「そうか?」
「そうだよ!」
「悪趣味かどうか、他のものにも聞いてみるか?」
「ってことは、これを見せて回るのか?それって 女装より恥ずい!」
「しかしお前の服はもう洗濯に回した。脱ぐか?」
「ぬっ!?
うー もう 寝る!」

そう言って、大きめのソファに上掛けを引っ張って行って寝てしまった。

半時も経たないうちに
今、怒っていたのがもうスヤスヤと寝ている。
「早いな。」
いくら私でも魔王陛下をソファに寝かせておくわけにはいかない。
また、抱き上げてベッドに移す。
「ゆっくり眠れ。」
こんどは 額に唇を落として 部屋の灯りも落とすために ベッドを離れる。

さて、今宵、私はユーリの横かソファか、どちらで寝ようか。

それにしても、やっぱり黒いレースが似合う。
次はどんな衣類にあしらったらいいだろうか。

制作意欲を燃やす長男だった。

FIN
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ピンクのサテンに黒いリボンがぐるっとなったような、あれは昔バレエの衣装のチュチュで見た組み合わせ。
最近はブラでそういうのありますね。
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