■グエユ置き場■

□グウェンダルのかぎ針2
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七月後半から、どうやら今年は地球と暦がほぼリンクしているみたいだ。
渋谷家でのおれの誕生日、あまりの暑さに風呂で行水しているとスタツアさせられた。すると、眞魔国でもちょうど誕生日の数日前になっていた。

俺が戴冠した翌年から7月29日を祝日にして、俺様 渋谷有利魔王陛下の 生誕を祝う日にしてくれているのだ。
ただ、地球とちょっとずれていたりして、同じ年に時期がずれて誕生日が二度来たりしていた。
今回みたいなちょうどいいタイミングもある意味すごい。

数日前から、国内外の主だった人たちが続々と俺の誕生日に合わせて血盟城に来てくれていて、まるで繁盛期の高級ホテルのようだ。小シマロン王のサラなんてもう半月も滞在している。

ああ、こういうときのために、この城はだだっ広くていっぱい部屋があるんだな。クマハチの迎賓棟は使えなくなっているので、新たな迎賓棟ができていたりする。

ーーーーーーーーーー

「グウェンダル?明日の準備って?」

「ああ、その前にこれを、一日早いが私からユーリへの贈り物だ。」
「これ?なんだろう。」
サッカーボールが入りそうなぐらいの大きな箱を受け取る。
ラッピングもすごいことになっている。
「開けていいの?」
「ああ、今開けてみろ。」

せっかく綺麗に包んでくれたものをできるだけ慎重に解いていく。
そうして 蓋を開けて出てきたのは。

「スッゲーニットの学ランだ。」
しかもまるで 親父が若い頃の話のネタで言ってたような裾の長い 長ランだ。
うーん長ランというより、大賢者が肖像画できていたような服だな。
「まさか、グウェンダルのお手製とか?」
「そうだが。」
「相変わらず器用だな。」
俺がそう言うと、ちょっと照れたようにフッと笑う。
グウェンダルの俺が一番好きな表情だ。滅多に見られないけど。

「ちょっと 着てみろ。」
「ああ、うん。」
手触りがサマーニットみたいだからと、そのままワイシャツの上に着てみると
…暑い、それに裏地なんか無くて、ニットの隙間から白いシャツの生地が見えてカッコ悪い。
えーい 意を決して 下着を脱いで、直接長ランを1枚羽織ってみる。おお、以外と涼しい。
「う、ユーリ。その格好で皆の前に出るのか?」
出るのか?って?これ着せてるのあんたでしょう?
って突っ込みながら改めて自分を見ると、ニットの目地から今度は素肌が見えている。 わ、これも気持ち悪い。

「それを着る時は、箱の中にもう一つシャツあるだろう?それを下に着た方がいいぞ。」
ん?あ、これは
ウニクロの(タグが付いているから地球製ね)ヒヤッとするTシャツ!色はブラックのこんなモノまで。
「それは コンラートに調達させたのだ。」
なるほどねー。
では、と改めて 黒シャツにニットの学ランを着る。

おお、学ランを着ているのに風を感じるよ。流石サマーニット、さすがグウェンダル閣下!
「ズボンはいつものを履いてもらうんだが、その前にこれを。」
って今度は10センチ四方ぐらいの小さいラッピングの箱を渡された。
「これも今開けるの?。」
「…式典当日の朝開けてくれ。」

ーーーーーーーーーー


「ってグウェンダルにもらったこれなんだろう。」
ベッドの寝室で小さなプレゼントボックスを眺める。
そこへ 正装に身を包んだヴォルフラムが俺を迎えに来ていた。
「ユーリ!それは! 僕が兄上に頼んで作ってもらったやつだ。」
「?ヴォルフラム?」
まあ、開ければわかるか。

カサコソ



…これは おニューの…紐パン…?

「…なあ、ヴォルフラム これ履かなくちゃいけないの?」
「僕がデザインして、兄上がかぎ針で編んだものだ。」
総レースの真っ黒の紐パン。前は密に編んであるけどオニキスみたいな黒のラインストーンがちりばめられている。後ろはスケスケの荒い網目で、しかも紐はサテンのリボンでこりゃすぐに解けそう…だってツルツルなんだもん。

「こんなの履かなくてもズボンあるんだから関係ないのでは?」
「下着って結構大事だぞ。軍人も敵地に赴く時は、下着を新しいものにして出発するのだ。そうすると気合が入るんだ。」
「…そう言う話は僕もひいじいちゃんに聞いたような気がするけど、戦場じゃないし…。」
「とにかく着てみろ。僕がつけてやろうか?」
ヴォルフラムの目がキラキラしている。
「いや、自分で履きます。」

コンコンコン ガチャリ
「ユーリ 今日の段取りだが。」
すぐに開けちゃノックする意味ねーだろグウェンダル。
よりによって、紐パンの二つ目のリボンをくくっている時に!
「ユーリ…」

「あ、グウェンダル。これ作ってくれたんだろ?」
「ああ。結構似合っている。」
レースが?絶対そんなことないよ!
「それでどうだ? 着心地は。私もそういうものは初めて編んだのだ。」
まあ、そうでしょうね。
「着心地はって…ひたすら恥ずかしいです。」
「ユーリ、それは着心地じゃないぞ。」
ヴォルフラム突っ込みありがたくないです。
「だってこのお尻のところの花の模様が、どれも大きな穴でなんかスースーする。ってそこの指突っ込むなヴォルフラム!」
「そんなこと言われたって、ユーリのお尻の綺麗な地肌が見えてるんだ。触りたくなるのは当然だろう!」
「当然じゃない!。」
ってヴォルフラムに気を取られていたらいつの間にかグウェンダルがすごく近くにいてヴォルフラムの反対側にまわって、俺の足元でしゃがみこんだ。
「ふむ。」
ふむってあんた。自分の作った俺の紐パンの出来映えをしみじみ見るんじゃねえ。わ、さらにレースの模様にヴォルフラムみたいに指を突っ込んできた。
「くすぐったい。」
「しかし このレース越しのユーリの尻の感触がなんともいいな。」
「グウェン ダル!」
朝から兄弟揃っておかしな雰囲気出すんじゃねえ!
「今日はもうスケジュールが押してるんだろう。」
「そうだな。とにかく早く着替えてしまえ、もうすぐギュンターが来るぞ。」
そうだった、この格好はぜったい王佐を洪水の源にしてしまう。今日みたいな行事のある日は困るな。
「わかった。で、段取りって?」
着替えながら グウェンダルと朝のミーティングに入る。
もう、城の中庭には門が解放されて自由に入れる国民の皆さんが俺の誕生日を祝いに集まってきていて、ざわつきが聞こえている。
国賓の客人も大広間でお集まりいただいている。

ーーーーーーーーーーーーーー
「へーかー。」
「あ、ギュンター来た。コンラッドも一緒?」
「陛下、今日はなんという麗しい衣装なんでしょう。」
「どう?似合ってる?。」
「ええ、すごく禍々しいですよ。陛下」
「陛下って呼ぶなよ名付け親。」
「そうでしたユーリ。」

「ユーリ、兄上の編み物は洋服はすごいな。その…ぬいぐるみと違って。」
ヴォルフラムは感心したように言う。
「うん。」
長ランタイプの長い上着に、青いマントを付けてもらった。
ズボンはいつもの学ランのだけど、その下のパンツは恥ずかしいあれだ。
「ユーリ なんかいつもより緊張してます?」
コンラッド、鋭い。まあね、やっぱりお尻がスースーするんだもん。
「でもウエラー卿、そのちょっとの緊張感がますますユーリをいい感じにしているような気がするな。」
…ヴォルフラムー!勝手なことを。
黙って俺たちのやり取りを見ていた長男がつぶやく。
「そうだな。いつもよりオーラを感じる。」
いやいや、オーラじゃなくて 緊張なんだってば。
たしかに、下着って大事…。

誕生日の行事の途中で長い廊下をグウェンダルとヴォルフラムなどと 王座のある部屋に向かって歩いていた。
「ユーリ、実は兄上には五種類ほど お前の下着のデザインを渡していたのだ。」
「五種類も?」
「そうだ、いつもの兄上が作っている編みぐるみの象の頭の付いているのとか。」
くれ4しんちゃんみたいな?
「後ろが紐だけのとか」
まさかTバック?
「素材が黒い皮で前を編み上げるのとか、鋲をあしらったのとか。」
俺にはあまり知識はないけどひょっとして
ボ ボンテージってヤツですか?
「そのデザインの中からあれを選んで、見事にユーリに似合うように仕上げるなんて、さすが兄上だなって思って。」
ヴォルフラムって本当にお兄ちゃんをリスペクトしてんだな。
俺はとてもじゃないけど勝利をそこまで持ち上げられない。
って感心していたら。
「全部作ったぞ?」
え?グウェンダル?
「本当ですか?兄上!」
「後で渡す。」
「誰に渡すの?」
「もちろんユーリだろう。」
「おれ?もう十分だけど。」
「全部黒だから お前用だ。」
げげっ
「それで ヴォルフラム、やっぱり製作者としてはそれらを履いたユーリの姿を確認する必要があるのだ。」
「確認しなくても、どれも可愛らしく似合っているはずです。」
そうだそうだ!確認しなくっても
っておれのTバックとかが可愛くあるかー!

「とにかく今夜確認しに行く。」
って土木現場の視察みたいに言ってグウェンダルが口を閉じる。

「うー」

一抹の俺だけの不安のもと
俺様 第27代 渋谷有利 魔王 の誕生日を祝ってくれる1日が続く。
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