■大人の裏マ■

□恋煩い ユーリVer.
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「渋谷どうしたんだ?最近は体調悪そうだな。」

「うーんまあ、なんか食欲がなくて。何かをする気もなくて。」
金曜日の夕方、ファミレスで俺はドリンクバーのブラックコーヒーをすすっている。
その横で村田健がグリルセットをつついている。ハンバーグに大きなソーセージ、エビフライ、などカロリーありそうな晩御飯だ。それが視界に入るだけで胸焼けがしそうだ。それにその食事代は俺もちなのだ。

実力テストで、どうしても一人では勉強に身が入らなくて村田に勉強会をお願いしたら報酬先払いをリクエストされてここに来た。

「うつ?五月病?
確かに眞魔国で仕事してこっちに来てフツーの高校生生活じゃ、やりがいの違いから気が抜けるのはわかるけど。」
「そういうわけではないけど、なんか気持ちが浮ついていて集中が出来ないんだ。」
「ふーん」

何気なく英語の教科書を開く。英語はボストンで生まれて、小さい時まではあっちにいたからか、ヒアリングとかはちょっといけているんだけど、文法がよくわからない。って思ったら、金髪の外人の写真が目にとまった。 目の奥にチカチカとあいつの面影がフラッシュバックする。またこれだ。発作のように脈が上がるのがわかる。思わず氷の入った水を一気に煽る。
「ふう。」

そんな俺を見て向かいの村田が
「なるほど、それは一つの心の病だね。」
「そうなのか?やっぱり二重生活がストレスだったりして?」
「いやいや、違うよ。 渋谷はかわいいなー。」
「な、こっちでそんなセリフ吐くなよ。」
「いやいや、渋谷がまだお子様だってことだよ。」
「なに。」
「自覚のないのがまた可愛いよ。」
「またって、またそういうこと言う。」
「今から眞魔国に行こうか。どうせ一瞬で帰ってこれるんだから、勉強には差し支えないんじゃない?」
「まあ いいけど。」
「体調が悪いならブースターもするからさ。渋谷が元気ないとみんなが困るからね。」

村田の食休みを待って、銭湯に行くことにした。銭湯の用意はしていなかったのでタオルとか石鹸とかを全部買うはめになった。まあ、いいけどね。
「あれ?きょうは夜なのに空いているな。」
「最近の銭湯は年寄りばっかりだから夕方の早い時間が一番混むんじゃない?」
「んじゃちょうどよかったな。」
「ああ。」



眞王廟の村田のプライベートバスルームに出た。眞魔国もどうやら夜のようだ。
「いいかい?ぼくの勘だけどね、渋谷はこれからこのまま血盟城に行ってごらん。そうすると多分心の病がなんなのかはっきりすると思うよ。ギーゼラでは治療は無理だよ。そういう類のやつだ。」
「はい?訳がわかりません。」
「とりあえず行っておいで」
背中を押されてまた水中に吸い込まれた。
…渋谷はそろそろ腹をくくったほうがいいかもね。自分の気持ちに素直に向き合って…
っていう村田のつぶやきが遠くに聞こえたような気がした。

やれやれ、世話の焼けるお子様だ。

「いじらしいねえ 本当はユーリの気持ちをこっちに向けたいのだろう?」
「うるさいよ。ぼくはもう恋愛なんか飽きたよ。」
「そうか?」
「面倒臭いことのほうが多いから。」
「そう言わずに俺と最後の面倒臭いことをしないか?」
「そのおふざけは面白くないです。」
「おふざけではないぞ。」
「いい加減 輪廻転生してください。そうしたら考えてあげます。」
ほんと面白くないです。眞王の冗談も。
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