■大人の裏マ■

□TELEPATHY or SYMPATHY
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「なあ、渋谷 前に携帯持ってたよな。水没したって言ってたけどその後は買ってもらえねえの?
やっぱ今時 家の人に繋いてもらうってないからさ〜。」

体育祭の実行委員になった俺、渋谷有利は隣のクラスの委員に言われて頭をかいていた。
もちろん銀行員のおぼっちゃまの俺は、友達より早く小学生の頃から超心配性の親父やお袋に
防犯ブザー代わりのお子様携帯から始まって3台ぐらい機種変しながらガラケーを持っていた。
持っていただけで、ネットに繋いでみるのはプロ野球や高校野球の結果ぐらいで、
まだ友達はそこまで進化してなかった。メールでやりとりしていたのはお袋だけだったし、
今の同級生のように常に覗き込むようなことはしなかった。

ある日から水難によく合うようになって高校入学祝いに貰って機種変したばっかりのガラケーを
多分あの公園の女子トイレで水没してお釈迦にしてからはもう親にお願いして新調してもらわないようにした。
普通は逆だろうけど、俺が必要無いからって言ったんだ。
水難ていうのは異世界というか俺のもう一つの国、この渋谷有利が王様として治める眞魔国へのスタツアが
どうしても水中をくぐるので、最近はやりのスマホとかももちろん持つことができなくなってしまった。
今時貴重なGショックが唯一 地球と行き来している機械ということになっている。

「ゴメン不便で。おれこの間水没させた携帯3台目で、さすがにお袋からもう呆れられてさ。
悪いけど緊急の時は家に掛けてな。出かけてたら通じないかもしれないけど。」
ま、3台目なのは小1から数えてだから物持ちは良い方だと本当は自負しちゃうけど。

おれに必要な緊急連絡は村田とのやり取りだけだ。でもこれも2学期からは電話なくても
できるようになっちゃったからな。

と思っていたらキタキタ。
『渋谷 今いいかな』

「あ、週明けプログラムの確認だな じゃあ。」
「おう、おつかれ。」
適当に隣を歩いていた連れと挨拶して別れて、物陰でチョット集中する。

あっちの世界の人間の国の箱の騒動の時に出来るようになってから、村田とだけテレパシーができるようになった。
オレは 村田がテレパシーができておれが受信しているだけだと思っていたんだけど、
…何言ってんの、渋谷の魔力が有るからできるんだよ。訓練すれば魔力のある人とはできると思うよ。
でもそう言えば今は他の魔族の人テレパシーやってなさそうだね…
って言ってたけど、まだ他の魔族にはチャレンジどころかテレパシーのことも話題にしていない。
ちょっとした制限はある、多少の集中力がいるのと、長距離は無理で
眞魔国の直轄地の端から端の三分の一ぐらいの距離が限度みたいだ。
同じ中学校区だった村田と俺の家の距離ぐらいなら全然大丈夫。
ガンダムのニュータイプみたいなものか。あ、魔族タイプっていうのかな。

『今日はどこからスタツアするの?公園でいいのかな』
『悪い、すげー腹減ってるから晩飯食ってから俺ん家の風呂でいいかな。
向こう行ってからも食えるだろうけど、空きっ腹で、スタツアしたら死ぬ』
『んじゃ 僕も一度着替えてから渋谷ん家に行くね』
『どうせずぶ濡れになるんだから適当でいいじゃん』
『何言ってんだよ、ママさんや巫女さんたちの前でみっともない格好はできないよ、
これでも大賢者様なんだから。それにちょっとあっちに持って行きたい物があって取りに帰らなきゃいけないし。』
『俺だって魔王陛下ですけどー』
って携帯で会話しているのとあまり違わない、せっかくのテレパシー。
それに、そんなに魔力を消耗している感じも無いってのは地球だから?とりあえずここでは村田と連絡さえ取れれば何とかなるし。
あ、一応 勝利ともテレパシー出来るみたい。こっちは双子ほどじゃならしいのだけど、兄弟っていうのもあるみたいで村田よりやりやすいから、
勝利からの干渉を嫌って絶対相手しないけどね。

今回はそんなに大事な用事じゃなくて普通に溜まっている政務を片付けに行くだけのスタツアで、
俺一人で行くつもりだったんだけど、まあいいか、いざという時にやっぱり
村田もいてくれた方が心強いのは確かだ。
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