■マ王■

□あなたがスターです。
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それではこっちへ と ヴォルフラムはユーリを部屋の中央へエスコートする。
魔王の寝室と同じぐらいの大きなのベッドがあったが天蓋は付いていない。何枚かの布団やシーツがまだらに重ねられていた。

「では、僕も準備するから 衣類を脱いで寝台へ 。」
「うん。」
少し緊張してきた、皮膚の内側を冷や汗が流れるような気がする。
服を全部脱いで、ベッドのシーツを緩く腰に巻いた。
「さて、獅子のポーズって?」
「まあ、四つん這いだな。」
「い? 魔王が四つん這いって…そんな王様の肖像画ってある?」
「ない」
「そうだよなー。」
腰にシーツを巻いたままやってみる。
「うーん?わからない。」
「渋谷全裸だよ。世界平和のためだよ。」
「村田〜」
ゔ だってはずい。婚約者ヴォルフラムの前では風呂とか着替えとかで全裸をちらっと晒すことはあるけれど、今回はヴォルフラムの視線の向こうに他の人たちの視線が繋がっているような気がして、
有利が固まって躊躇しているとヴォルラムが天使のような微笑みを浮かべた。
「やっぱり裸は嫌だな。恥ずかしさにこんなにピンク色に染まったユーリの全身なんて、僕だけの特別にしておきたいな。」
「僕も見ていますけど。」
雰囲気をぶち壊してくれてありがとう大賢者。

軽く溜息をついて、ヴォルフラムは絵を描くときにいつも着ているスモックのポケットから一つの小さい布を出す。
「ユーリこれを」
紐パンだった。いつも有利が履いているのと同じデザインだがサーモンピンク色だ。
「優しいなー渋谷のフィアンセは、やけるね〜。」
「うるさい村田。 さすがヴォルフありがとう! んじゃ早速。」
シーツを腰に巻いたままゴソゴソとサーモンピンクの紐パンを履いて、シーツを外す。
「おお、これ一つ履いただけで気が楽になるあ〜」
「渋谷あれできるんじゃない?履いてないようにみせるやつ。」
思わず左の掌を右のグーでポンッとやってしまった、
「ああ!あれ。」
「なんだそれは。」
「地球の日本で流行ってたお笑いのネタでさ。でもあれ腹が出てないとできないんだよねほとんど。たしかこうやって」
ベッドでは安定が悪いから床で、一本足打法のもう少し足あげたポーズに手を使ってヴォルフの目線から紐パンを隠す。
「うわっユーリ!」
「わはは、履いてるってわかっててもちょっとドキドキするよ。」
「なっ猊下!」
「ドキドキ?やーね。 安心してください、履いてますよ。」
仁王立ちして 両手でパンツを指差す。
「あはは!渋谷!完ぺき! 魔王陛下のやることじゃないけどねー。」
「へへへ。」頭をかいて恐る恐るヴォルフラムを見ると涙目になって腹を抑えている。
「くそっ、ユーリ!笑いたくないのに。あー可笑しい。地球はなんて変な芸のあるところなんだ。」
爆笑のヴォルフラムはちょっと貴重だぞ。
「はは、眞魔国の連中が真面目すぎるんだよ。そうだ俺、今度ヨザックににも教えてやろうかな。どこかで使えるんじゃない?」
「ぜひ教えてやって。俺のお墨付きのネタだよって。」
「猊下がヨザックに教えてください。ヨザックにユーリのこのポーズを見せたくない。」
「確かに俺もヨザックにはしたくないね。なんか後が怖い。」
ーーーーーーーーーーーーーーー
緊張が取れたところで次は獅子のポーズだ。
「んじゃ改めて獅子のポーズだな。」
ベッドの上で四つん這いになってみる。
「うーんこれでじっとするのしんどいな。」
「うわ、真正面は獅子じゃないよ渋谷。」
「え?」
「女豹のポーズだよん。」
「女豹って 俺は男ですが。」
「確かに正面から上目遣いに見られたらユーリは色っぽすぎる。」
ヴォルフラムも頷く。
「えー 色っぽい?俺が?」
「こちらの世界の人にはそう見えるかも。これは印刷したら売れるぞー。」
「お金になるならやる。」
「わー現金な魔王だな〜。」
「そうだユーリ、恥ずかしいぞ。」
なんだかんだ言うわりに、ヴォルフラムはなぜか村田の意見を素直に聞くのだ。
「だって政治ってお金いるんだもん。それにこれでお金が入ったらさ」
「入ったらどうするんだい?」
「僕たちの結婚資金だな!」ヴォルフラムの納得顔が怖い。
「いや違うから」っていう魔王陛下の呟きはヴォルフラムには聞こえないようだ。張り切りだしたぞ。
「わかった。頑張って魅力的なユーリを描こう。もうちょっとだけ体を右に降って目線をこっちに持ってきてみろ。そうだ、それで腰は落として。その方が四つん這いよりは腕が楽だろう?」
「うん、これなら。」

ヴォルフラムがデッサンを始めた。
ちょっと移動してドアの近くにあるカウチに腰掛けた大賢者はあらかじめ持ってきていた分厚い本を読みだした。どうせ作業が始まれば村田にはすることがない。


数日前村田は一つだけヴォルフラムにお願いしていた。
「渋谷の絵を、大賢者の肖像画と入れ替えてくれ。」
「どうして?」
「僕がここにいてそこにもあったらドッペンベルガーを見ている気になるんだよね。」
「ドッペンベルガー?ってわからないですが、確かに猊下はここにいらっしゃるんだから変ですよね。」
「でしょう。」
「では、村田 健がもう少し大人に成長されたら、僕が改めて貴方の肖像画を製作して並べましょう。」
「ありがとう!渋谷に聞いていたけど、フォンビーレフェルト卿って本当に優しいんだね。ツンデレっていうの?いいと思うよ。」
「!それって褒めているんですか?」
「そうだけど。」
「…ありがとうございます。」
「できたら渋谷とツーショットで描いてね。」
「それは無理です。」
「そこはツンなのね。」
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