■大人の裏マ■

□恋煩い ヴォルフラム Ver.
2ページ/6ページ

ユーリに左頬を打たれた翌日のあの ユーリの内の魔王が初めて僕の前に具現化したあと、兄上の部屋に呼び出された。

「ヴォルフラム 新しい魔王のことだが、暫く婚約者と言う立場を保って
より近くでお前が警護をしてくれないか?」
「僕がですか?
しかし兄上」
僕の反論を兄上が手振りで制した。

「本来ギュンターや私がするべき事なのだが、
ユーリ陛下はまだこちらの事を知らないし、帝王学や政治の事も学んでこなかったと聞く。
まだまだ政務はギュンターや私が中心になって行わなければいけないので、
陛下の警護までは手が回らぬかもしれぬ。」

「はい、それはわかります。」

「出会い方は最悪に近いが、ここはこの摂政として兄として ユーリ陛下の警護をヴォルフラムに頼んでも良いか。」

僕は滅多に言われる事のない兄上の頼みに逆らえるはずはない。

「わかりました。」

了解を口にしたのに、兄上はじっと僕を見る。

「いいか?魔王に一番側で警護をするということは、お前にも危険が及ぶやもしれぬのだ。
それでも、魔王の無事を第一にと 心得てほしい。それが眞魔国の民のためになるのだから。」

「わかりました。命にかえましても、ユーリ陛下を御守り致します。」

「そして、もしもユーリが心身とも魔王陛下として立派に成長したら、
お前との婚約を取り下げるよう手続きを手配しよう。」

「はい。」

そうして、ユーリには言えなかったが かりそめ の婚約者として 側にお使えする決意をしたのに、
戴冠式で不覚を取って離されてしまったのだ。
その悔しさと言ったら、あろう事か眞王陛下をお恨みしそうになるほどだった。

なぜあんなに悔しかったのか、その時はわからなかったが 今は分かっている。

それにしても、ユーリは魔王陛下だというのに 優しい存在だ。
それがことごとく功を成していく。
僕はそれをずっと側で見守っていて、初めは気持ちがある訳ではなく、
兄上から言われた仕事だと思って魔王陛下に寄り添ってきたのが、
すっかりユーリの魅力に参ってしまっていた。
今までこんなやり方をする王がこの世界にいただろうか。
優しくて しなやかで 慈悲深くて、でも根幹の部分は意外に強くて頑固だ。こんな存在を僕は今まで知らなかった。
コンラートはスザナジュリアがそんな人だと昔言っていた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ