■大人の裏マ■

□サラサラ3羽根付き2
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「うーん…」
血盟城の中庭には、真ん中にある七夕飾りの木の前で腕を組んで仁王立ちになって唸っているヴォルフラムがいた。
「よう、ヴォルフラム?どうした?なんか変な短冊があるのか?」
「ユーリ、帰ってきたのか。出迎えられなくて悪い。」
「いいって、イベントの準備してくれていたんだろう?言い出しっぺが動けなくてこっちこそ申し訳なかったのに。」
「いや、ユーリのためにってみんながこぞって動いたから、僕は大したことはしてないんだけどな。それよりこれを。」

なんか裏が銀色の他のものより少し大きめの紙に、見覚えがあるような でも全然読めない文字の短冊がぶら下げられていた。

「こ、これはもしかして。」
「ああ、もしかしなくてもあれだ。」
「俺ちょっとギュンターに辞書を探してもらってくる。」
「僕も行くぞ。」

たしか血盟城の書庫にあったはずだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「陛下 ありましたよ 聖砂国語⇄眞魔国語 辞典。」
「ありがとうギュンター。よし、それであれを解読しにいこう。」
「ああ、嫌な予感しかしない。」


そうして解読した短冊の内容は
【七夕に ユーリと二人きりで会えますように。 サラレギー】
いつぶら下げたんだこれ。

げ、ってことはつまり。
「坊ちゃん、小シマロンのサラレギー陛下が間も無く直轄地に入られるそうですよ。」
「ヨザック、その情報はいつ仕入れたのだ?」
俺の気持ちをヴォルフラムが代弁する。
「サラレギー陛下が到着すること?」
「いや、眞魔国に来ることだ。」
「それは 七夕のイベントが決まってすぐですよ。坊ちゃん達もその時は聞いてたじゃないですか。」
あれ?そうっだけ?
期末試験のこととかイベントのこととか色々ありすぎて俺の中で情報が整理できなかっただけなのか?

サラレギーの対策とイベントの内容確認で、王の執務室に主だったメンバーが集合している。それでもコンラッドは警備の強化に軍の指揮のため出かけている。グエンダルはイベントがあっても止められない普段の政務をこなすために自室にいる。

「ギュンター、サラレギー陛下はユーリの誕生パーティーに来るのではなかったのか?」
「いいえ陛下、陛下が地球に帰った後に予定変更の白鳩便が来まして、今日から誕生パーティーまで7月はずっと眞魔国に滞在するらしいですよ。」
ってギュンターも知ってたのね。

しかし そんなに長期滞在って何するんだ。
でも、まてよ、俺と会いたいって書いていたのは今日だけだな。うーんよし。

「ヴォルフラム、サラレギー陛下が半月以上眞魔国で楽しめるように、明日朝までにツアーコースを考えてくれ。」
「つあーこーす?」
「貴族たちの城の空き部屋とか、別荘とかを貸してもらって、転々と巡ってもらうんだ。そんで、それぞれの地元のご馳走を振る舞うんだよ。」
「なるほど。」
「それには必ずこちらの者を添乗員として同行させて、サラやよその国の人が変なところに入っていかないようにも監視させるのだ。それから、彼に振る舞う料理は俺の魔王の予備の金を使ってくれ。でも、いくらぐらいかかったのか記録させて。」
「なんと陛下、すばらしいアイデアですね。」
ギュンターが感心してくれる。
「いや、地球の観光のパクリだけどね。うまくいけば国外のお金に余裕がある人が眞魔国に観光に来て、どんどん外貨を落としてくれるモデルコースにできるのじゃないかな?」
それで、この国に学校とか介護とかの施設をじゃんじゃん造っちゃえ!
ニヤリ
「すごいじゃないかユーリ!」
「でも、サラレギー陛下には無料で振る舞うのですか?」
「うん。小シマロン王が巡ったコースってだけでも 値打ちが上がるんじゃない?せっかく来ていただくんだ。ここは盛大に…利用してしまえ。」

「坊ちゃんもなかなかの策士ですなあ。」
ヨザックが 悪徳商人よろしく笑うので、俺もお代官っぽく切り返す。
「ふっふっふ、おヌシほどでは わはは… なんてね。」

「いい?ヴォルフラム、明日の朝までに あちらこちらへ白鳩便を飛ばしまくってコースを整えるんだよ。」
「わかったユーリ。任せろ。眞魔国の威信にかけてサラレギー陛下に満足してもらう観光を至急企画しよう。」
ヴォルフラムに眞魔国の王様っぽく仕事を頼めるなんて、俺もちょっと成長したな。…自画自賛。

「そんでね、ヨザックさん、君にサラレギー陛下のツアーの添乗員をしてくれないか。」
「あら、陛下 もちろん承りますとも。その仕事は世界中を回っているオレにぴったりの役目ですやん。」
「添乗員の制服は俺が決めるからね。」
「えー可愛いのにしようと思ったのに。」
「だめ、眞魔国の品を上げるために女装禁止、そのヨレヨレの普段着も禁止!」

パンパン
柏手を二つ叩いて気合いを入れる。
「じゃあ、みんな頼んだよ。今夜のイベントだけでも疲れるだろうけど、サラレギー陛下の動きは放っておけないからね。」

そうして、俺の部下たちはそれぞれの持ち場に向かう。

さて、サラか、今夜だけとはいえどうやって出迎えたものか。

「ダガスコス、あの塔の物見台にテーブルと椅子を持っていけないかな?」
螺旋階段を思い浮かべたのかあきらかに気が乗らない様子で
「…まあ、持っていけますけどね。」
本当は嫌なんだな。
「あ、いいや、ここはコッヒーにたのむよ。
おーい コッヒー!」
そうして、俺の部屋のテラスにあるテーブルセットを 4体のコッヒーに運んでもらう。テーブルにはサラが呑みそうな酒とそれのつまみと、俺用の飲み物もセッティングしてもらう。
最後に俺用の名札の付いているコッヒーの背中のをまた借りて今日は学ランの下に仕込む。
…ちょっときついけど。

そうして、物見台の椅子に腰掛けてサラを待つことにした。
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