■大人の裏マ■

□サラサラ3羽根付き2
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眞魔国でも、一年で一番夜の短い季節の黄昏が近づく頃

「ユーリ、来たよ。」
「ようこそ サラレギー陛下。眞魔国へ 血盟城へ。
悪かったね、こんな階段の大変なところに呼んで。」

「ユーリがこんな素晴らしい風景を見せてくれるなんて。本当に眞魔国は緑が豊かでいい国だねえ。」
「ありがとう、それも サラがそれまで続いていた戦争をしなくなってくれたからもあるんだよ。きっと。」
そう言うとサラは少し目を見開いたかと思うと 穏やかに微笑んだ。
「そうだね。」

サラを椅子に促して、手際よくはいかなかったけどワインを開けて俺がグラスに注いでやる。地球のテレビで出ていたソムリエを思い出してしぐさを真似る。ここはカッコつけてスマートに。

「ユーリ…ありがとう。」

俺には自分でジュースを適当にグラスに入れる。
自分でこそばくなるとは分かっているけどこらえて更に格好をつける。
俺は魔王だ、
「サラ、七夕の再会を祝って乾杯。」
「ユーリ陛下 ふふっ 乾杯」

そうして 俺としても気になっていた小シマロンや大シマロン、そして聖砂国の様子をサラからあれこれ聞き出す。サラの周りの人やお母さんも元気だと聞いてよかったとも思う。
そうこうしているうちに待ち焦がれていた夜になった。
地球ほど眩しくない繁華街が更に少し距離があるので、満天の星空が見えてきた。天の川的なものが見える。この風景は渋谷家のベランダよりかなり良い。

「すっかり暗くなったね。」
カチャリと音がしてサラが色眼鏡を外す気配がした。猫のように瞳が金色に光っている。魅入られたように金色から視線が外せない。
気がつけば サラの両手に頬を包まれていた。
「ユーリ。僕の所にお嫁に来ないか?」
そう言って唇が重なる。
どういうわけか金縛りにあったように動けない。
そうだ、サラの視線は危険だったじゃないか。久しぶりだからといって大事なことを忘れていた。
でも なんとか手を動かして胸元の青い魔石を握る。
すると 拘束がすっと解けるのを感じる。

それにしても お嫁って どういうつもりだろう。
俺を取り込めば魔族の国も手に入るとでも思っているのか。

ぐるぐる考えているうちにサラに学ランのボタンを外されてしまった。
「サ、サラ… もうちょっと待って。俺からのプレゼント もう一つあるから。」
「なあに?ユーリ。 私が欲しいのは君なんだけど。」
やれるか!
心の中で突っ込んでいると

ドーン

爆音とともに閃光が光った。

眞王廟からだ。

打ち上げ花火が始まった。
アニシナさんの力作だ。どんどんと打ち上げられる。

「どう?サラ。俺の生まれ育った所では夏の夜といえば花火なんだ。火薬は戦争に使うのじゃなくて、土木工事とかこうやって夏の夜空を彩るのに使うんだよ。」
花火に驚いたのか、サラからの拘束が完全に緩んでいる。

そのまま物見台の手すりの上に立つ。
血盟城の塔のてっぺんの次に高いところだから、いつもの俺なら絶対お断りだ。
でも 今日は違う。

サラに脱がされかけた学ランの上着を脱いでしまう

「サラ、眞魔国に来てくれてありがとう。今宵は この花火を見ていて。明日から眞魔国の観光スポットのツアーをプレゼントするから楽しみにしてね。」

そうして コッヒーに借りている羽根を広げて 物見台の手すりから離れる。

「ユーリ え? そんな 飛ぶなんて。」
「俺は進化する魔王だからな。」なんてね。

そして続けて叫ぶ。腹に力を入れてちょっと威厳を出せればと思いながら。

「ヨザック!」
「は、ユーリ陛下。」
「あと頼んだよ」
ドアの陰からうちのナンバーワンの御庭番が出てくる。
サラの前だからか 坊ちゃん とは言わなかった。
今日は グエンダル隊の服装にしてもらった。これで明日も添乗員してもらう。

「じゃあ サラレギー陛下 また明日。お休みなさい。」
恭しく芝居がかってお辞儀をしてから はばたく。

「ああ、お お休み。

え?もう行っちゃうの?」

「ええ、うちの坊ちゃ いや陛下は忙しいですからね。一応七夕の夜に あなたのお望み通り急遽お会いすることも致しましたし。」

なんて ヨザックの説明が花火の音の間に聞こえていた。

そのまま羽ばたいて 血盟城の俺のじゃなくてヴォルフラムの部屋のテラスを目指す。
テラスのドアは開いていた。
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