SHORT STORY

□もう少し…
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「…お姉さん?」

零くんの……安室さんの隣にいた男の子に呼ばれてはっとする。

『あ、ご、ごめんなさい。人違いだったみたいで…』
「…いえ、気にしないでください」
『坊やも…ごめんなさいね……』
「ううん。それよりその“零さん”とお姉さんはどんな関係なの?」

男の子の何気ない疑問に答えようとすると…あの日の記憶が蘇る。

『…私の大切な……大切な人。数年前にいきなりいなくなっちゃったけど、ね。』

自嘲気味に笑いながら男の子を見る。その子は何か考えるような仕草をした後

「…その人のことお姉さんは今でも大好きなんだね」

『えぇ。この世で一番……大好きな人よ……だから、探してるの。今回は人違いだったみたいだけどね…』

「……見つかるといいね。その人」

気休めだろう。こんな小さな子からフォローされるなんてよっぽどな顔をしていたことだろう。
お礼を言うと気にしないで、と返ってきた。

『二人とも甘いものはお好き?……ケーキなんですけど』
「え、あ、はい」
「うん!好きだよ」

じゃあ、と言いながら二人の前に先程買ったケーキ屋の袋を差し出す。
『…お詫びとお礼です。ほんと気持ち程度ですけど……』
「そんなっお気になさらず…それに僕は何もしてないので受け取れませんよ」
『いいんです。私が受け取って欲しいだけですから…それに一人では食べきれない量を買ってしまったので貰って頂けると助かります』
「それでは…有り難く頂戴します」
『坊やも食べてね。チーズケーキなんだけど好きかな?』
「うん!お姉さんありがとう!!」
『それならよかった。こちらこそありがとう、では』

そういうとまだ若干ふらつく身体を鞭打って歩き出す。
零くん探しは振り出しに戻ってしまったけどなんだか元気になれた気がした……
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