dream 短

□流るる髪の梳かしあい
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忍者のゴールデンタイムは夜だが、忍者のたまごばかりの忍術学園は眠る。今夜も忍たまや先生たちは日々の疲れを癒すためにぐっすりと寝ていた。しかし1人、寝ていないくのたまがいた。そしてそのくのたまは一室へこそこそと入っていった。
「土井先生…?」
スーッと障子を開け、確認をするように部屋の主の名前を呼んだ。
机に向かっていた半助は筆を置いて振り返る。
「名前か、おいで」
そう言う半助の顔は普段は組の生徒には見せないような甘くて、まるで花を愛でるような顔だった。
半助と名前は月に数回、半助と同室の山田伝蔵が出張でいないときに逢瀬をしている。立場上、教師と生徒のためこの仲は秘密でないといけないからだ。
「凄く久しぶりな気がするな」
と言って半助は名前の手をとり自分の方へ寄せた。ぎゅっと握る手に鼓動が早まる。
「あっ」
急に腕を引かれ、腰に手を回されたかと思うと、いつの間にか半助の腕の中におさまっていた。久しぶりの半助の香りと温もりに名前は胸が高鳴った。
「土井先生…」
「ん?何だ」
半助の優しい声は甘ったるく耳を刺激した。
「髪、すごく痛んでる」
名前がそう言うと、せっかく良い雰囲気だったのに、と言わんばかりの表情で半助は目を見開いた。
日頃から四年は組の斉藤タカ丸に怒られているだけあって、名前が触ってもゴワゴワするのが分かるくらい傷んでいる。名前はおもむろに懐に入れてあった櫛を取り出すと、半助の腕を抜け、背後に座った。
「じっとしていてくださいね」
半助は先ほどの雰囲気を壊されたせいで少し不満そうに、ああ と返事を返した。
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