dream 短

□病は恋の素
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「学園の保険医が風邪ってあんた…」
そう呆れた顔で名前を見下ろしたのは、一年は組実技担当の山田伝蔵だった。確かに忍術学園のあろう事か保険医が風邪を引いてしまったのは、自己管理が出来ていないと主張しているといっても嘘ではない。呆れられるのも確かだった。
「まあ今日は安静にしてなさい」
ため息混じりの伝蔵の声は名前を悄げさせた。

風邪の原因と言えば、つい昨晩のこと。
一年は組の教科担当の土井半助が風が涼しいからと障子を開けてプリントの整理をしていたところ、その涼しい風が半助のプリントを数枚どこかへ撒き散らしたのが始まりだった。そこへ風呂上がりの名前運が良かったのか悪かったのか、たまたま通りかかった。
「あら土井先生?」
名前が声をかけると半助は恥ずかしそうに苦笑した。
「実はプリントが風にさらわれてしまって…はは」
そう言う半助の腕には数枚のプリントがある。聞いたところあと3枚だと言うので、名前は草履を履き一緒に探すことにしたのだ。
半助と名前が探すこと5分ほどで2枚は見つかったが、残り1枚がなかなか見つからなかった。加えてプリントをさらった風の夜だけあり少し肌寒く、とうに湯冷めをしていた。
「土井先生のプリントは隠れんぼがお上手ですね」
クスクスと笑う名前に半助はドキッとした。そうなるのも仕方なく、風呂上がりで薄着である目の前の異性に胸が高鳴る。緩く締められた腰の帯は意味のなさず、動くたびに胸元がはだけた。時々覗くうなじ、色気を出す後れ毛、月明かりに照らされた白く豊満な若い女の体。そんな名前の姿は25歳独身をいとも簡単煽った。しかし忍者の三禁、半助はわざとらしく頭を横に振り嘘をついた。
「あっ、あったあった!これで全部揃いました!ありがとうございました」
そしてぺこりと頭を下げ、足早に母屋に戻って行ってしまった。突然すぎる出来事に名前はしばらく突っ立っていた。去ってしまった半助の余韻に包まれながら、まあいいかと同じく母屋に戻って行った。
名前が朝目覚めると体が重く、頭痛がして、喉も痛い。とても1日働けるような体ではなかった。保険医だからこそ自分の体のことは自分が一番分かっているからと、学園長に休むと告げ、さっさと自室に戻って目を瞑っていた。

見舞いに来た伝蔵が出ていくと、名前は一気に眠気が襲ってきてそのまま寝てしまった。
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