dream 短

□夢
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「子供は何人欲しい?」
突然の名前の問いかけに、半助は飲んでいたお茶を吹きかけた。
「な、なんだ急に!?」
慌てる半助と正反対に名前は澄ました顔で続けた。将来どんな子供に育てたいか、歳をとっても手を繋いでくれるか、どれもこれから先の話ばかり。
「あなたが思う将来を知りたいわ」
にわかに真剣ともとれる名前の表情に、半助は少しばかりの不安と疑心を持ったが、きっと名前のことだろうから裏などないのだろうと受け入れた。

「そうだなあ…」
ズズッとお茶をすすりながら半助は考え込む。それは凄く真面目に考えているようで、うんうんと悩んでいた。
そしてしばらくして出た半助の答えがこうだった。

名前との子供ならきっと可愛いだろう。だがまだ所帯を持ってから早いから、子供は先でいいよ。もっと2人の時間を過ごすのも大事だ。
ちなみに子供は男と女1人ずつがいい。贅沢だと笑うんじゃない。もし男が生まれたなら、たくましくおおらかで、素直な子になってほしい。女なら、花のように凛としていて清い子だな。どちらにも将来は忍者になってほしいとは思わないが、本人が望むなら仕方ないだろうと思う。
名前はさっき、歳をとっても手を繋いでくれるかと聞いたね。答えはもちろんだ。歳をとったとしても、いつか別れがきても絶対に君の手は離さないよ。…ああ、何だかくさいことを言ってしまった。今のは忘れてくれ。
それから話は変わるが、名前の好きなところを言わせてくれ。こんな機会滅多にないからなあ。言おうといえばいつでも言えるが何分恥ずかしい…。まあ、まずはその目だ。透き通っていて、まるで上等な宝石のようだ。割れてしまいそうなのに、たまに奥の方で炎が灯ったかのように熱い視線が見られるのが好きだ。あと首も好きだ。君の首は折れてしまいそうだよ。抱きしめる時はいつも力加減が難しい。長い髪を掻き分けてその白い首に手を伸ばす瞬間がどうにも好きだ。…変態だ!?自分でもなんとなく分かっているから言わなくていい…。そして名前の温かさが好きだ。こんなことを言うのも渋るが、私は常に死と隣り合わせだ。教師と言っても私の命を狙うものはたくさんいる。そんなとき、君の待つ家に帰って最初に君を抱きしめる。そして心臓の鼓動を感じ、血のかよう温かさを肌で感じ取ると、私は今この瞬間やっと生きていると実感できるんだよ。名前はいつも安全な「生」の側にいるもんだから、いつも不安にさせてしまってすまないね。
久しぶりにこんなに話したものだ。たまにはこういうのもいい。今日はもう疲れたから寝るが、明日は名前の夢を聞かせてくれ。それじゃあ。

それだけ言って、半助は寝室へと行ってしまった。名前は嵐のあとのような気分でしばらく呆然としていたが、半助の時折混ざる甘い言葉と慣れない吐息を思い出して顔を赤くした。加えて明日は名前が言わなければいけないという事実にも。
きっと半助は確信犯だったのだろうと、名前は顔を覆いその場に寝転んだ。
(あなたとの将来の夢なんて言いきれないわ)

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