dream 短

□病は恋の素
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寝苦しく浅い眠りがなんとも言えないくらい気持ち悪い。それに鬱陶しい悪寒から逃げたくて仕方なかった。もう頭がハッキリせず、自分が寝ているのか起きているのかも分からない。
すると暗闇の遥か遠くから、あの半助の声がした。自分の声を呼んでいる。
「名字…せ、##NAME 2##せ、せい…」
薄く目を開けると目の前には半助が心配そうな表情で名前を覗いていた。咄嗟に何でだろうと思う。まさか半助が自室にいるなんて思ってもいなかったからだ。ぼんやりとした頭は考える力を無くしているため、まだ意識がハッキリとしない名前をよそに半助は続けた。
「すみません、食堂のおばちゃんにお粥を持っていけと言われて来たのですが。うなされていたもんですから」
慌てる名前をなだめるように優しい口調で半助はそう言った。それは、無理やり起こしたことを詫びているようなんだとだけ理解できた。
(でも待てよ?私がいるのはくのたま側の母屋で、普段は男子禁制じゃなかったっけ?)
未だ意識はハッキリせず、よく分からない知識は確証がとれない。しかしくのたま側の母屋に男子禁制なのは確かだった気がする。じゃあ何故土井先生はここにいるのだろう。
「名字先生?」
半助が大丈夫か、と聞きたげに名前を呼ぶ。それをきっかけに名前はこれは夢なんだと確信した。何故かというと、以前から想いを寄せているがそう話したこともない半助が自室にいることと、男子禁制の記憶があったからだ。

「お粥、食べますか?」
お粥…そういえばさっき半助が食堂のおばちゃんに頼まれて持ってきたと言っていたことを思い出した。名前はどうせこれが夢ならば、今のうちに好きな人に思い切り甘えてしまおうと思った。
「土井先生が食べさせてくださいな」
名前は風邪で潤んだ目をしながら甘ったるい声でお願いした。その時半助は一瞬驚いたような顔をして目をみはった。それもそのはず普段澄ました名前がこんな風にお願いをしてくるのは初めて見たからだ。
半助は葛藤した。右からは、こんなチャンス滅多にないんだぞと頭の中の悪魔がささやく。左からは、昨日名前の体に我慢するのにギリギリだったのに今日我慢できるものですかと天使がささやく。そんな中半助が決めたのは……。
「名字先生、体起こせますか?」
悪魔の言うことだった。
病人がお願いしているのに、このまま置いて部屋を出ていけないと自らを正当化しての決断だった。仮に我慢できなくなった時は、は組のことを思い出して胃を痛くさせればいいと。
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