一人じゃないよ、大丈夫だよ

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どぼん、と鈍い音が聞こえた。
私は、車に跳ねられたはずなのに、もしかして飛ばされた先は池だったのかな、もしくは、川?なんてぼんやり考えていた。
なんだか、息が出来ない。無駄に長く伸びた栗色の髪が目の前で揺れていた。息を吐くと泡がいくつも上に向かって浮かんでいく。
眠るように目を閉じて、ひんやりと冷たい水に身を任せていると、急に引っ張られる感覚。
ゆっくり開いた視界に飛び込んで来たのは、お日様の光を受けて輝く金色だった。

ーーーー

「あ、出てきたぞー!!」

「よかった!」

一行、麦わらの一味は、突然人が海に落ちるのを目撃した。
どうして何もない所から落ちるのかという疑問はあったが、人であるなら助けなければいけないだろうと決断。
頻繁に海に落ちるルフィを助けているサンジに、その命が下った。
彼は見事に落ちてきた何かを拾えたらしく、船に上がってきた腕には小柄な人間が抱えられていた。

「…至って普通の女の子ね」

「水とか飲んでないかな。とりあえず、俺診てみるよ!サンジ、その子医務室に連れてきてくれ」

「おう」

女の子は丁重に扱うことを第一としている彼は、横向きに少女を抱え直してチョッパーと医務室へ入っていった。

「…気を失ってるのか?」

「いや、俺が助けた時はまだ意識があったぞ」

少女の呼吸の音を聞いたりしているチョッパーは、その細い腕に巻いた血圧計の数値を見て、不思議そうな表情を浮かべた。

「お?どうした、チョッパー」

「いや、血圧が異常なまでに低いんだ…。心拍数も、少し少ない。体温も低いし…何か病気があるのかな」

「どうする。誰かに伝えとくか?」

「いや。まだ完全にそうと決まったわけじゃないからいいよ。
そうだ、お前海水でびしょびしょなんだから早く着替えてこいよ」

いつもより少しラフな服は、海水をたっぷりと含んでいた。床にも滴り落ちていることに気がついて、サンジは風呂と着替えを済ませようと立ち去った。

「…ふう。あいつがいると、ちゃんと診られないからな…。まだ耐性付いてないかもしれねぇし」

チョッパーはもしかしたら、内部の損傷があるかもしれないと思い、少女が羽織っているカーディガンを脱がせて、体に張り付いているYシャツを素早く取り払った。

外気にさらされた右腕を見た瞬間、チョッパーはぎょっとした。

「なんだ、これ…傷か?
新しいのも、古いのもある…」

数えきれない程の切り傷や刺し傷が腕を覆い尽くしていた。傷が深い箇所は縫合し、浅い箇所には薬を塗って包帯を巻いた。

内部の損傷が無いことを確認して、タオルで体を拭こうと思っていたら様子を見に来たナミとロビンがいた。

「どう?その子」

「大丈夫…じゃないけど、とりあえず診終わったぞ。あ、風呂と着替えを頼めるか?海水でべたべただから、起きたとき気持ち悪いだろうし…」

「そーね。腕の怪我に気を付けておけば大丈夫なんでしょ?」

ナミが指差したのは、先ほどの腕の傷を隠す包帯。チョッパーはそれに頷いて、風呂へ運ばれていく少女を見送った。

「…怪我の事、ちゃんと訊かなきゃな」

誰もいなくなった医務室で、チョッパーは一人そう呟いた。
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