レジェンド

□そして母になる
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これは女の勘だけど
単なる勘じゃないと思う





遠い昔からDNAに刻まれた
女としての勘





「それ、勘…というか
体が訴えてるんじゃない??」

「まぁ、そうなんですけどね」





親友の夏未に相談しているのは
最近の体の不調について
私の勘では、これはいわゆる
妊娠の初期症状だと思う





「私も経験があるわけじゃないから
詳しくわからないけど、
つわり?とかは無いの??」

「あー、食べ物見たら気持ち悪く
なるやつ??
それが全然無いんだよねー」





と、私は目の前にあるチーズケーキを
食べながら言った
夏未も「そうみたいね」と少し呆れた
ように言った





「病院には行ったの?」

「ううん、なんか怖くて」






そう、私は妊娠という事実を医師に
告げられるのが怖い

私とヒロトは結婚してるわけじゃない
だから、もし妊娠してたとして
それをヒロトに告げて、彼はどう思うだろう…





「ヒロト、今すごく忙しい時期なの
あの若さで社長になって
毎日ホントに大変そうなのにさ
妊娠しなんて言ったら…」

「彼が拒否すると思うの?」

「ううん、それはたぶん無いの
きっと喜んでくれると思う」

「それならいいじゃない」

「でも、私と子どもがヒロトの負担に
なるのは目に見えているもの
私、ヒロトの枷になりたくない…」





涙が出そうになった
こんなにヒロトのこと好きなのに
大好きな人との間に授かった命が
彼の重荷になってしまうなんて
それだけでなく、今の私ですら
彼のお荷物になってしまう





「とにかく、まず病院に行きましょ
まだ100%妊娠してるって
決まったわけじゃないんだから」

「でも、もしホントに妊娠してたら?」

「そんなの、わかってから考えても
遅くないはずよ ほら、行くわよ」





夏未に手を引かれカフェを出た
ほんと、夏未の行動力は昔から尊敬する
中学の時の世界大会のときも
1人で外国に行ってしまったり
ずっと片想いしてた円堂君と結婚しちゃうし




「夏未っ」

「なぁに?」

「…ありがと、夏未」

「なによ改まって」





微笑む夏未に、私も笑みを向けた





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