novel
□海導
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ジリリリリリリリリリリ!!!!!!
「うわあっ!!!!!」
『6時5分前。起床時間5分前』
放送と時計は毎朝きっかり5時55分の時間を守る。少女は布団から這い出して、けたたましく鳴り続ける時計を止めた。しかし先程の放送にも目覚まし時計の音にも全く動じず、隣で眠る青年は気持ち良さそうに寝息を立てていた。
「……」
ふわふわの金色の短い髪の毛から、穏やかな表情がのぞいている。まるで今の騒音などひとつも聞こえていないかのような様子だ。
少女は彼の右耳をつまみ、ぐいっと引っ張った。
「いでででででで」
「お〜き〜て〜!!キショウジカンで〜す!!」
つまんだ耳のそばで少女が思い切り叫ぶと、観念したように青年は身を起こした。
「んぁ……いってぇ〜、……もう朝かあ? ふあ〜……」
「ちょっとロシナンテ! きいてる!?」
「ん……あ、そうか、能力解除してなかった」
さっきの大声が届いていなかったことに気づき、少女は不満そうな表情で彼を見上げた。
「も〜、“カーム”つかうとよくねむれるのはわかるけど、いっつもねぼうするんだからやめてよね!」
「あ〜ワリワリ、今夜は努力するよ、フメイ」
「やくそくだからね」
ロシナンテはまだ眠たそうにしながらも、布団から出て片付け始めた。フメイもまたほうきで部屋の掃き掃除を始める。
「ま〜忘れてもこうしてフメイが起こしてくれるから、つい忘れちゃうんだよな」
「もう、そうやって15もとししたの“ようじょ”にあまえるのはよくないっておつるさんゆってたよ」
「げ。なしなし!今のなし!ってゆーか幼女なんて言葉お前が使うもんじゃ……あ〜それより!おつるさんには今の内緒!」
「どーしよっかな」
「頼む、今日は訓練終わったらすぐ帰ってくるから」
「ほんとっ!?」
途端にフメイは目を輝かせてロシナンテを見つめた。
「ほんとだよ」
「ぜったいだよ!? センゴクさんにザンギョーたのまれても、ガープさんにせんべいもらっておはなしさそわれても、ぜんぶことわってね!」
「ふっ、ああ、わかったよ」
ロシナンテは優しい笑みを浮かべながらフメイの頭をくしゃりと撫で、撫でられたフメイも嬉しそうに笑った。
******
朝食を終えて食堂を出ると、ガープ中将が待っていた。
「おはようございます、ガープ中将!」
フメイとロシナンテはビシッと敬礼し元気よく挨拶をする。
「おはよう! 今日も容赦はせんからな、覚悟しておけフメイ! ワハハ!」
「はい! よろしくおねがいします!」
「よろしくお願いします、ガープ中将」
「ああ、任せとけ! お前はセンゴクが呼んでおったぞ」
「はい、予定ではセンゴクさんが訓練の教官をしてくださることになっています」
「そうか、あいつはお前を気に入っとるからのう! ではフメイを借りるぞ! またな!」
ガープに手を引かれたフメイがロシナンテを振り仰ぐ。
「ロシナンテ、約束守ってね」
「ああ、わかってるさ」
ロシナンテはフメイの頭を撫で、にっこり笑ってその場を後にした。