剃刀

□剃刀02
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例えばそう______高い位置からホースで地面に水を撒いて、それがアスファルトに打ち付けられる………そんな音が数秒ごとに聴こえた。

____今夜の天気は赤い雨。


「そっちだ!そっち行ったぞ!撃て!!」

『と・見せかけてこっちでしたー』


仲間に叫ぶ男の後頭部に向けられた銃口。
バン!バン!バン!と乾いた音がした直後、ビチャッと音を立てて男は倒れた。

男に三発食らわせた人影は、
血に濡れた白い仮面を被っている。
深く被った黒いフードで髪も輪郭も見えない為性別の判断は難しいが、とにかく小柄だ。

「チッ……撃て!”今日こそ”仕留めろ!」

中心にいた男を射殺した人影に一斉発射された魔術。一瞬で電柱の上に飛び上がった人影の周囲に冷気が渦巻く。全ての攻撃を跳ね返した冷気はやがて氷柱のように形を変え、敵に放たれた。まるで水に石を投げ込み、その飛沫が自身に返ってくるような光景。

____悲鳴が聞こえる。飛沫が舞う。


『っ…_____はぁ…っ…』


血の滲む腕を抑える人影。自身の冷気に溶ける白い息。ゲホゲホと咳き込む人影は倒れこむように電柱から飛び降りた。
…直後____ピリ、と空気が張り詰めたのを感じ、人影は静かに息を整える。


『……だれ』

「へぇ…速いのは仕事だけじゃないんだ?さっすが魔術師殺し回ってるだけあって気配には敏感だネ」

「天童さん、こいつが”そう”なんですか?」


電柱や建物の上に現れた三つの影のうち、赤髪をした長身の男は仮面の人影の後方に立っていた。


「そ。”白い仮面に黒フード。モノクロなんてオシャンティな異名を持つ魔術師に特化した殺し屋” とはまさにコイツのことダヨ太一」

『背後に立たれるのは嫌いだから帰ってよ。それに君らと殺り合うつもりもないし______「帰らないよォ」』


ヒュンッ……!
人影____”モノクロ”の立っていた場所には赤髪の男、白鳥沢支部の天童が立っていた。天童の片手には敵を仕留め損ねた苛立ちを表す様に赤黒い色をした煙が暴れている。

いつの間にか五色の背後に立ち「(速い…!)」その首元に銃口を向けるモノクロ。

「魔術師のクセになんで銃?」

人質に取られた五色。川西はジャリ…と地面の砂利を強く踏みしめるが、天童の手に制される。

『殺し屋っぽいでしょ』

モノクロはそう言って銃をしまい、その場を去った。

「追わないでいいんすか」

「ウン。勘だけどあの銃には俺らが不利になる仕掛けがあるとみた。迂闊に刺激して工が再起不能にでもなったら困るし」

「…すいません」

「帰ろっか!(…工とだったら向こうの方が上だし…とか言ったら一週間は凹むだろうな。)」



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