Guilty

□本当の番犬
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「貴金属の針金に魔力を通し、変幻自在の使い魔として行使する貴族がいたのは知ってるな?入学してすぐに習うオートで追尾する自立型のヤツだ」

「……ハイ。アインツなんちゃらっすよね」

「ベルンな、影山」


菅原に優しくツッコまれる影山は、先ほどの試合ログを見ながら監督烏養の解説を聞いていた。綾芽が発動した魔術は生まれて初めて見て、受けたからだ。
つまり”貴金属の針金に魔力を通し使い魔とする”………その類の魔術だろう。そう思っていたが烏養は苦笑いしている。


「…アレは同じように見えて同じではない。その違いが目で見て分かんのは一流魔術師か歴史専攻生ぐらいなもんだろうけどな。ステータスでいえば終の使い魔の方が上だ。それが何故かわかるか?」

「!……いや、わかんねぇ…です」

「よく覚えとけよ。
…オート追尾の自立型なのは同じだが、あの赤い糸は魔力を込めた血液を媒体とした超高難易度の魔術だからだ。____アレをいとも簡単に操ってる時点で他にもとんでも魔術を使うに違いないが……終の本当に怖いところは_____…」



______学園外・コンビニ前
偶然というのは時に幾度にも重なることがある。……否、世界は偶然で満ちている。


「ハハハハハァ!今日の犠牲者は10人ってとこかぁ?そろそろ仲間も来る。楽しい狩りの時間だな」

散歩がてら町に出てコンビニに寄った宮兄弟と綾芽は偶然、指名手配中の殺人犯と出くわす。……そして偶然入り口付近にいた綾芽の首元にナイフを当てがい人質にとったのが現状。

「侑…結界張って催眠かけて殺す?」

綾芽を背後から捕まえている手はちょうど綾芽の胸の膨らみをガッチリホールド。無表情の治もさすがに眉をピクリと動かしているし、侑にいたっては苛立ちが頂点を超えたのか絶対零度の無表情だ。

……その時、綾芽は魔力で身体を強化せずに単なる護身術で回し蹴りを施すが______…ドカッ。男の蹴りが入る。

「人間にしてはやるな!格闘技でもやってんのか?お嬢ちゃん」

侑は即座に理解した。この男は魔術師で、だから店内の全員を殺して逃げる自身があるのだと。

『かくとうぎ……?』

ポツリ呟いた綾芽は前髪の隙間から覗くその赤い目を男に向けた。

「ぁあ?聞こえな______ァアアア!?!!!!なんだ、なんッ_____!!」


血のように赤い目と目を合わせた男の視界は赤く濁りながら地震のように揺れていた。それがピタリと止まり、ゆっくりと目を開くと______「なん……だ…?」……モノクロと赤色の世界。周囲の物や人の配置はなんら変わっていない。……そう、変わっていない。つまり動いていないのだ。

「結界だと?まさかお前俺と同じ(魔術師)か!……だったらもっと早く言ってくれよ!」

『……』


男はもう一つ気づかなければいけない事実に気づかないまま、焦ったように作り笑いを浮かべ綾芽に歩み寄る。媚び。


「同じ?笑わすなやエロジジイ」


______鼻で笑う声がどこからか聞こえる。




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