Hate

□スパイ殲滅と新入り
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ヴーッ、ヴーッ、ヴーッ…
___________のそりと布団から出た片手がようやくスマホを掴むと、布団の中に引きずり込まれる。ディスプレイに表示されたのは”古森からの着信”の文字。

「オッス!宮ー」

「……今めっちゃ気持ちよう寝とってんけど」

「悪いねー。けど赤谷が動いたみたいでさ。今綾芽ちゃんから連絡あって読み通りスパイで間違いなかった。赤谷が張った結界内でこれから捕縛する所らしいから、迎え頼める?今俺含む全員がQの事で出張っちゃってて。」

「ん…了解。にしてもやっぱし綾芽ちゃん狙ったか」

宮はよっこらせと布団から起き上がると、洗面所で歯ブラシに歯磨き粉をつけて咥えた。その余裕は綾芽の力を知り、信頼しているからこそ生まれるもの。

「そうそう。アイツは綾芽ちゃんのこと全然知らないから今頃痛い目合ってるんじゃない?」

「フッフ。そらなぁ。
けどあの厄介な結界相手や。早よ行ったらなな」


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「くそ……!(こんな魔術……どこに隠してやがった…)」

____________魔術師を取り締まる組織の人間と元組織の人間の争いは、この結界がなければ確実に周りに大きな被害が出ていただろう。綾芽相手にボロボロになった赤谷家の秘技である結界の内側を見れば一目瞭然。
そして勝負がつくのは至極早かった。

…赤谷の身体を縛る何本もの赤い糸。血を媒体にした魔術”硝子の悪魔”は二匹の獣使い魔に姿を変え、赤谷を見張っている。

『もうすぐ他のメンバーが迎えに来るよ』

組織への裏切りを制裁した綾芽の目は冷めきっている。勝負がつくのは早かったが、裏切り者とはいえQのスパイであり、組織に足を踏み入れた者……更にはこの狭い空間で争えば当然綾芽も無傷では済まない。

綾芽の顔や服の袖から出た手脚の所々に傷、シャツにはポツポツと赤いシミができている。

「へっ……その前に結界が閉じるっての。
なにせこの結界は閉じ込めた奴の魔力を吸って壊せば壊すほど結界強度と厚さが自動で上がる。しかも壊す力の倍にな!」

重傷を負った上で縛られ使い魔二匹に睨まれる赤谷。負けを認めない彼の言う通り、結界は穴を塞いで驚異的な速さで自己修復をしている。綾芽の魔力は吸収されてゆく。

____________それでも綾芽はいつもの表情で結界の天井部分が塞がってゆくのを見上げている。……ブチブチと引きちぎるような音が聞こえ、視線を向ければ「これで形勢逆転だな」と赤い糸をちぎって立っている赤谷。結界の自己修復と連動して術者も強化され、修復されるらしい。


「手も足も出ないだろ?」

『……………軽症で連れ帰るつもりだったけど、しつこいからいいよね』

綾芽の頬、細い首筋、両腕に現れた魔術刻印。まるで刺青が赤く光っているような光景。直後綾芽は自身の魔力を一気に解放した。

……パンッ。

「はぁ?何言っ__________ぁあああああ!?!!!」

結界と赤谷が驚異的な速さで強化と修復していたのは、綾芽から吸収できる魔力が多かったから。そこへ一気に大量の魔力を送り込んだ事によって赤谷の片腕が破裂したのだ。綾芽に返り血がビシャり。
そして____________同時に結界までもが破裂した。


「ちょうど終わったとこみたいやなぁ」

『………宮くん』



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