Hate
□新入り視察とスパイ
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綾芽の声が空気をピンと張り詰めさせた。ほんの少しの緊張感に包まれる。しかしメンバーは「きた」と言わんばかりにニヤリと好戦的な笑みを浮かべ、次の言葉を待っていた。
『一つは今ので、二つ目は術者が学園内又は学園付近にいた可能性がある』
「「「!」」」
『あの使い魔は多分、一度召喚されれば敵を自動で追撃、殲滅するまで攻撃する…みたいなやつだと思う。でも最低一人は術者がそばにいなきゃ成立しないはず』
「綾芽ちゃんの”硝子の悪魔”みたいなもんやな。まぁ数多いだけで性能も魔力も綾芽ちゃんには劣るか」
「つーか目的はなんだよ。あっさり全部潰されてたじゃねえか」
『私の左手首から下は”動かないだけで死んでは無かった”。向こうはおそらく私達を不能な状態にすることが目的だったんだと思う。いずれ合間見えるって分かってるから。
………でも、宮くんクラスの優秀な治癒術師がいるのは知らなかったんだろうね』
「なるほどー。あの狭い講堂の中、あれだけの使い魔が千を超える刃物を一気に投げりゃ当たるしね」
「つーかこんな気まぐれ野郎、治癒術師なんて言わねっつの」
「酷いなぁ、俺は選り好みが激しいだけやのに…」
「自覚してんのな!!」
「まあまあ。綾芽ちゃんの話最後まで聞こうよ!_________それで?」
『…………』
綾芽はそこでいつものように目を逸らしてしまう。まるで言いづらそうに。
「言えよ」
佐久早はそんな綾芽に、どこか分かったような口ぶりでそう言った。
『………スパイが、いると思う』
____________シン、と静まる室内。綾芽は考えすぎだった…とさらに顔をうつむかせたその時。星海が真顔で「だろうな」と言った。
「ま、それしかないやろなぁ。昨日は色々都合良すぎやったし」
「佐久早は?」
「俺も同感」
「じゃーみんなは誰がスパイだと思う?」
「「「『________』」」」
「……ま、そうなるよな。
でもこの件はさっさと早く片付けたいよね。新入りの選抜が始まってるわけだし。たしか明日視察だよね?綾芽ちゃん」
『うん。魔戦烏野の影山くん』
「へんな男やったら俺に連絡してきいや。綾芽ちゃんの為やったらすぐ駆けつけるで」
「お前が言うなお前が。大体コイツはそこらの男にやられるほどヤワじゃねーだろ!…あっ」
『古森くん、お腹すいた』
「確かにすいたね!なんか食べに行こっか!」
「(!?…、綾芽が怒ってこない!?)」
少し変わった綾芽。そしてスパイの正体とは。
「じゃー取り敢えず各自______には警戒で。一応宮が綾芽の傷全回復させた事は言わないでおこう」
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