封神演義

□ここで封神して
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目眩がするような眩しさに目を開けると、私は切り株を枕に寝かされていたようだった。ゆっくり身体を起こすと、何故だか毒気はすっかり抜けていた。

昨日の夢を思い出すと、穴があったら入りたいくらいの恥ずかしさだったが、同時に覚めてしまった事を残念に思った。

消えた焚き火を見て、彼は昨日本当にここに居たんだと実感する。そして自分の無愛想に愛想を尽かされた事も思いだして、自分の不器用さにうんざりしてしまった。

あんな態度をとったのだ。もう二度と姿を現してはくれないだろう。彼はそういう人だ…。

千載一遇のチャンスを自分で踏みにじっているのだから世話ない。

『…はぁー…』

伏「何を朝からそんなに落ち込んでおるのだ」

『…………っ!な、なんっ!』

自分一人のはずなのに話かけられて…しかもこの声を聞き間違えるはずがない。どうして?昨日、背中が見えなくなるまで見送ったはずなのに…。

伏「なにをそんなに驚いておる?」

『っ、だって…昨日』

伏「昨日…なんだ?何処まで覚えておるのだ?」

『昨日、見送ったのに…なんで…』

伏「毒で動けぬお前を放っていなくなる訳がなかろう」

『毒…昨日のあの龍は』

伏「女禍の宝貝だ。女禍の消滅と共に封印が解けるよう細工がしてあってのう。わしはあれを探しておったのだ。それをお主が先に壊してくれたおかげで禍根も消えたわ」

『そう、だったんだ…』

『……ん?私どうやって毒を中和したの?』

伏「………覚えておらぬのか?」

『……うん』

伏「ならばもう一度再現してやろう。ちとこっちに来てみ」

こいこいと手招きする太公望(伏羲)に寄っていくと、ぐっと腕(怪我してない方)を捕まれ伏羲との距離をなくされた。

『っちょ、なんっ…!んんっ』

ぐっと後頭部を抑えられ、伏羲の唇と唇同士が触れ合う。

身長差はさほどなかったはずなのに、伏羲となってから少し背が伸びたらしい。爪先で立たないと届かないそれは、次第に唇を割り暖かい物が咥内に滑り込んでくる。

『んっ…ふぁ…っ』

巧みな舌使いに翻弄されていると、たっぷり堪能してからチュっと小さく音をたてて漸く離れた。

真っ赤になって唇を抑えていると、ニヒルに笑う伏羲と目が合う。

伏「こうして薬を飲ませたのだ」

『っ…』

伏「あぁ、それからこうも漏らしておったな…わしと離れるくらいなら封神してくれと」

『!!う、そ…』

伏「本当だぞ」

『だ、だってあれっ、夢じゃ…』

伏「ないぞ」

かあぁぁぁっと顔中に熱が広がっていく。そっ、なん、どう…もう何もかも言葉にならなかった。

そんな私を伏羲はぎゅうっと抱き締めた。

伏「わしの気掛かりはお前がなくしてくれた。わしはもう何処へも行けるぞ。高嶺、お前はどうしたい?」

『っ…!』

伏「出来るなら、わしはお前と共に居りたいよ」

『わたし…』

伏「うん」

『私も…一緒にいたい…』

腕一杯に愛しい彼を抱き締めて

『私も連れて行って』

やっと素直に

伏「ああ」

自分の気持ちに正直に

伏「朽ち果てるまで、共に」

END
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