HQ短編
□先輩のお願い
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大学二年に上がった年の夏、高校で部活の先輩だった木葉先輩と小見先輩から突然連絡がきた。
元梟谷の先輩達とは、たまに集まってご飯や飲み会をしたりしていたけど、春休みに集まった時に木葉先輩も小見先輩もそういえば彼女と別れたから誰か紹介して!と言っていた。
もしかしたら、今回の連絡もそれ絡みかも…と思いながら渋々連絡アプリを立ち上げると、やっぱりそうだった。私は今、夏休み前の閑散とした大学のテラスで一人、スマホを無言で眺めている。
私は口下手な為あんまり友人がいないと、前にも言ったはずなのに…。そんなことお構い無しの先輩達は、次々に好みの女性の特徴をリクエストしてくる。
元梟谷のグループトークな為、その二人以外にも既読がついていく。(私はまだ既読スルー状態)なんて返そうか思案していると、梟谷のマスコット(?)木兎先輩からもメッセージがきた。
「俺も混ぜて〜!」
楽しい事が好きな木兎先輩は、多分女の子とかどっちでもいいんだろうな。さっきからバシバシとリクエストを送ってくる二人とは違い、女の子のリクエストを送ってこない。ただ、楽しい所にいたいって感じだ。
尚も既読スルーを継続していると、木兎先輩はなぜかグループに黒尾さんも追加してきた。収集がつかなくなりそうだ。もうばっくれちゃおうかな…。
そんなことを思いながらピコピコと通知音を鳴らすスマホを眺めていると、私の向かいに誰かが座る気配がした。その人…赤葦先輩はテーブルに紙コップのコーヒーを置くと、自然な動作で私の正面に腰を降ろした。
「久しぶり」
『…お久しぶりです』
同じ大学とはいえ、学年は違うし生活リズムも違うから中々顔を合わせる機会がない。
『大学で合うの、珍しいですね』
「この前試合で出られなかった講義が今日あったんだ」
お疲れなのか一息つくと、紙コップのアイスコーヒーを一口飲んだ赤葦先輩は、大学でかなりモテる部類なのにも関わらず、この先輩も木兎先輩同様女子よりバレーな人だった。それは高校の頃から変わっていないようだ。
「さっきからスマホがやたら震えると思ったら…あの人達何やってんだ…」
私と同じ元梟谷のグループの画面を開くと、呆れたように言った赤葦先輩は、「…木兎さんもいるのか」と、溜息を吐いた。
『…彼女と別れて寂しいって春休みに木葉先輩と小見先輩が言ってました』
「そういえばそんな事言ってたかも…うわ、弧爪と月島も黒尾さんが招待してる」
『…来ないんじゃないですか?あの二人は』
「黒尾さんが無理矢理連れてくる可能性はあるよ」
『…友達いないのに私…』
「あぁ、だから返事してないんだ?」
『そうです…呼べる保証もないのにやたら返事もできないし…』
「じゃあそう連絡いれとくよ」
『え』
言うが早いか、赤葦先輩は私の変わりに代弁してくれたらしく、人集められたらまた連絡するそうですと一報してくれた。ありがたいやら自分が情けないやらで、もともと下降気味だった気分がスピードを上げて更に下降していった。
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