黒バス短編
□モノクロdays
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中学時代を共に謳歌した彼と自然消滅したのは、ありきたりな卒業式での事だった。
彼は京都、私は東京。
卒業式が終わり、さよならのその瞬間まで…私は春から通う事になる高校名を伏せていた。それを告げると、彼は「…そうか」と一言。そして私達は別れ話もなしにその場を別れた。
中学三年生での全中制覇を達成したときに、チームとして大切な物が欠けてしまった彼等を見ているのが辛かった。何よりも、テツヤ君の存在を全否定するかのような彼等のプレーには心底腹が立った。
マネージャーとしても、友人としても、恋人としても…そんな彼等を許す事は到底出来なかった。
こんなのはバスケじゃない。バスケである筈がない。そんな葛藤を胸に溜めていたら、自然と赤司君との距離も開いてしまっていた。
そんな折、志望校に迷っていた私に声を掛けてくれたのは幼馴染のテツヤ君だった。
「…僕と一緒に来ませんか?」
全中が終わってからのテツヤ君はとても痛々しかった。荻原君との約束をキセキの世代に踏みにじられた彼は不登校になり、誰にも顔を会わせなくなった。私も何度か門前払いを食らったが、五回目にして漸くテツヤ君は顔を見せてくれた。
私はテツヤ君の話を聞きながら、自分があの時思った事を素直にテツヤ君に話した。皆の事が許せない事、荻原君の表情が忘れられない事、進学先に迷っている事を。
そしてテツヤ君の助言によって、私は高校を誠凛に決めた。きっとテツヤ君が彼らを変革するキーパーソンになると、本能で感じたからだ。
きっとテツヤ君がキセキの世代を倒してくれる…。半ば博打のような期待を彼に寄せたのは確かだった。
それから私達は誠凛へと入学し、テツヤ君は選手として。私はマネージャーとしてバスケ部へ入部した。
テツヤ君は青峰君に変わる光を見つけた。そして彼等キセキの世代を倒すと、火神君とテツヤ君は私に約束してくれた。
彼等のサポートを全力でして、休む暇もない位忙しい日々が続いた。それでも、ふとした瞬間にどうしても思い出してしまう面影に、泣きたくなる衝動を無理矢理押し込む事もあった。
学校からの帰り道、出てきそうな涙を無理矢理引っ込めて我慢していると知った気配が私の後ろに居ることに気が付いた。テツヤ君はゆっくり私と歩幅を合わせると、白い息を手に当てながら口を開いた。
「もうすぐウィンターカップですね」
『……うん』
「…赤司君と連絡とかは」
『……とってない…っていうか、とれない』
「何故?」
『だってさ、私は赤司君が負ける事を望んでるんだよ…そんな私が彼に言える事なんて、何もない』
「高嶺さん…」
『…だから、今はさ…ウィンターカップで勝つ事だけ考えよう?』
「…はい。勝ちます…高嶺さんの為にも」
『…そこは自分の為に勝ってよ』
どんな顔して連絡とればいいんだろう。付き合っているかどうかも定かではないのに。自嘲気味に笑う私を、テツヤ君は心配そうに見ている。
それから私達は、言葉を交わす事なく帰路についた。
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