黒バス短編
□確信犯
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『…はぁ』
社会人三年目、私は人生の壁みたいなものにぶち当たっている。私の目の前には、これでもかと積まれる書類の山、山、山…。
中学、高校と青春を部活に捧げ謳歌し、大学はちょっと遊んだりもしたけど人並み以上に頑張って、そこそこ名の知れた会社に就職…したまでは良かったのに。今までの人生、彼氏の一人も出来ず…それを悲観することなく、ひた向きに頑張ってきたのにっ!なんだこの仕事の山ぁ!
今日は花金で中学高校の同級生とちょっとした飲み会があり、朝はルンルン気分で鼻歌まで唄っていたというのに昼にはドン下がり。
機嫌のいい私に腹を立てた上司にこれでもかと仕事を押し付けられた。
絶望的、絶対定時には終わらない。だが、売られたケンカは買うのだよ。
元同窓生で今は会社の同僚の口癖を真似ながら上司から売られた書類(ケンカ)と戦い、間に合わなかった定時。
眉間にシワを寄せた緑間君が迎えに来た。
「…またあの上司か」
『…まあ』
「パワハラなのだよ」
『…だよね』
以前上司からの交際を断ってからずっとこの調子だ。朝上機嫌でいると女は気楽でいいなとか、そんなに暇なら仕事くれてやるとか、パワハラモラハラのオンパレード。
上司相手に言い返す訳にもいかず、黙って引き受けてかれこれ四時間。上司から回された書類の3分の2は終わった。
「手伝うのだよ」
『…ここで手を借りたら、なんか負けた気がするから気持ちだけ頂きます』
「変な意地を張るな」
『先に行って遅れるって伝えて?絶対間に合わせるから、さ』
「だが、」
『お願い、緑間君』
「……………分かったのだよ」
漸く折れた同僚を見送って、残りの3分の1を片付ける。こんなに溜めやがって、無能上司め!と、絶対に口には出来ない文句を心の中で吐き捨てて、時計をチラチラ見ながらそれでも手だけは止めずに書類の山と戦った。
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