黒バス短編

□もどかしい君との距離
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『すみません、黒子君に家人から伝言を言付かっているのですが呼んで頂けませんか?』

茹だるような真夏の体育館。夏休み中だというのに学校まで足を運び、世話の焼ける従兄弟を呼びつけた。

虹「黒子?…あぁ、アイツならあそこでへばってるよ。悪いがあそこまで行ってやってくれないか」

『わかりました、ありがとうございます』

先輩が指を指すその場所に、ごろりと転がる水色の従兄弟。一軍に上がったと本人から聞いた時は驚いたが、どうやらその練習量にはまだまだ追い付けていないらしい。

靴を脱いでその場に揃えると、体育館内の視線を集めながら私は水色を目指した。


『テツヤ君』

黒「…………高嶺さん?」

『今日叔父さんも叔母さんも帰りが遅くなるんだって。だからご飯家に食べにきてね』

黒「そうですか……わかりました」

『夕飯何がいい?』

黒「……見た通りこの有り様なので、出来れば軽めの物でお願いします」

『了解、部活がんばってね』

黒「はい……わざわざありがとうございます」

『大丈夫、ついでだから』

じゃあまた、と挨拶を交わすと私はスタスタと体育館の出入口まで歩いていき、体育館を出てから一礼して目的地へと足を向けた。


【黒子視点】

高嶺さんが体育館から出ていくと、何故か桃井さんや青峰君、黄瀬君が転がっていた僕の側へとやってきた。

黄「黒子っち!さっきの女の子ってもしかして彼女とかっ!?」

桃「ああああの子っ、2組の真白さんだよね!?テツ君とどういう関係なの!?」

黒「どうしたんですか、二人とも…?」

見兼ねた青峰君が珍しく二人のフォローに入った。

青「いや、飯がどうとか話してたじゃねぇか。まさかテツに飯を作ってくれる女がいたとは…」

言いながら落ち込み始めた青峰君。どうやら二人のフォローではなかったらしい。

紫「あれって白ちんでしょー?黒ちん仲いいのー?」

桃「そういうむっくんはよく知ってるね…ってそっか、同じクラスだね」

紫「うん、そーだよ」

黒「仲がいいかと聞かれると…いいと思いますよ」

青「くそっ!練習にもついていけねぇのに女いるとか随分余裕じゃねぇかテツ!」

青峰君が力強く僕の肩を抱き、ギリギリと首を閉めてくる。

黒「ちょ、痛いです青峰君」

赤「お前達、何を騒いでいる」

黄「赤司っち!」

僕らの騒ぎを見守っていた赤司君の堪忍袋の緒がついに切れてしまったらしい。ジリジリとプレッシャーをかけながら僕らの元へ緑間君と歩み寄ってきた。

黄「聞いてよ赤司っち!さっきの女の子が黒子っちの彼女かもって今尋問してた所なんっスよ!」

緑「…彼女?さっきのは真白だろう?彼女な訳がないのだよ」

桃「え?どういう事ミドリン!」

赤「お前達は知らなかったのか?真白は黒子の従姉妹だ」

桃黄青「「「従姉妹!?」」」

紫「へぇー、そうだったんだみどちんも赤ちんもよく知ってるねー」

緑「去年同じクラスだったのだよ」

赤「俺は委員会で少しね」

高嶺さんが緑間君と赤司君と知り合いだったとは知りませんでした。面倒事が嫌いな彼女が個性的が少々過ぎるバスケ部の…それも一軍に知り合いが居たことに驚いた。

黒「彼女の両親は海外で仕事をしているのでとても心配していて…それで従兄弟の僕が週に2〜3回程ご飯を一緒に食べてるんです。家の両親も帰りが遅い日が多いので」

黄「なあんだ、そうだったんスね!」

青「紛らわしいな」

紫「3人が勝手に勘違いしたんでしょー?」

桃「う…そうだけど…」

黒「気まぐれでお弁当も作ってくれる時があります。青峰君がこの前横取りした日は高嶺さんが作ってくれたお弁当でした」

青「…あの唐揚げは旨かった」

赤「…そうか、なら今度の合宿でご飯係を頼もうかな。丁度探していた所だったんだ」

赤司君の言葉に青峰君の表情に花が咲いた。余程口に合ったらしい。

青「ホントか!」

黒「…どうでしょうね、夏は忙しい人なので…」

緑「…部活をしているのか?」

確か去年は入っていなかった、と緑間君が続けた。確かに彼女は部活動には所属していない。だが、それ以外に多忙な理由が彼女にはあったのだ。

黒「本人に確認するのが一番だと思いますよ」

赤「…それもそうだな、今日黒子は真白の家に行くんだろう?一緒に行っても構わないか?きちんと本人に確認しなければな」

黒「僕は構いません」

赤「なら今日の部活終わりに寄らせてくれ」

黒「わかりました」

彼女の返事はなんとなく想像出来てしまうが、赤司君が言うのならば仕方ないだろう。一抹の不安を覚えながら、僕は部活動に精をだした。


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