たんぺん!
□君の名を
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あぁ、今日も。なんの変哲もない一日が過ぎてゆく。
いつからだったか、もう忘れてしまった。気が付けばいつの間にかそこにいて、彼等の中に溶け込んでいた。
夜ト神のストーキングに嫌気のさした壱岐さんが、小福様の処に逃げ込んで、大黒さんに夜ト神が叱られる。
それを修行から帰ってきた雪音くんと兆麻さんが呆れたように眺めている。
そんな毎日が、いつの間にか楽しいとさえ感じていた。
「もぉー!夜トぉーー‼」
「悪かったってひよりぃー!」
『まぁたやってるー』
「全く…しょうがないな、夜トは」
いつまでも続くのだと、そう思っていた。
壱岐さんが用事で帰った後、縁側で夜ト神と雪音くんと兆麻さんと並んで大黒さんから頂いたスイカを頬張っていた。
「いつか嫌われんぞひよりに!」
「なっ!ひよりが俺を嫌うなんて…絶対ない!」
雪音くんの辛辣な台詞に夜ト神が食って掛かった。
『うわー…凄い自信』
「何を根拠にそんな事言えるんだか…」
私と兆麻さんは呆れ気味にシャクシャクとスイカを頬張っていると、不意に夜ト神が私を見つめる。
「なぁ、高嶺って誰の神器なんだ?」
夜ト神の何気無い一言で、私に影が差した。
『…なんで?』
「字は見当たらないけど、誰かの神器なんだろ?…でなければこんなにはっきり存在出来ないじゃん?」
夜ト神の言葉に、黙ってスイカを食べていた雪音くんと兆麻さんもこちらを見た。
「僕も気になっていたんです。高嶺は…」
『いないよ』
兆麻さんの台詞を食いぎみに、私は笑顔で答えた。
『もう、いない。名前を消されて、消えちゃった』
苦笑しながらそれだけ言うと、場の空気は凍りついたように静かになった。
どうやら、私はちゃんと笑えていなかったらしい。
居ずらくなった私は挨拶もそこそこに、夜の街をフラフラと宛もなくさ迷い始めた。
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