たんぺん!

□嫉妬ぐらいする
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「全く、また小福様の処に入り浸って…そんなにヴィーナを裏切りたいのか?」



『……そんなつもり、ない』



兆麻は、私にだけ冷たい。正論なんだけど…正論なんだけども(大事なことなので二回言った)例えば巴の一族には言わないような事も、私には言う。



「そんなに蒼麻を叱ってやるな兆麻。今日は私が小福殿の処へ使いにやったのだ」



「ヴィーナは蒼麻を甘やかし過ぎです」



兆麻の怒りように今日も長くなりそうだと、そう思った。
















しこたま兆麻の説教を受けてきた私は、性懲りもなく小福様のところに足を運んだのだった。



「なんだよお前…まぁた兆麻を怒らせてきたのか?」



『別に…怒らせたいわけじゃ、ない』



夜トがニヤニヤしながら私をつついてくる。セクハラで訴えんぞ、大黒に。



「でも確かに、兆くんって蒼麻ちゃんには厳しいよねぇ〜」



小福様は相変わらず楽しそうに、へこんでいる私の頭をなでなでしている。



『嫌いなんじゃないですか?私が麻の一族だから…』



私と兆麻は麻の一族の生き残り。あの時、主様がヤスミの亜種に侵された時…兆麻が夜トを連れてきた。



夜トは麻の一族皆をばっさばっさと切り捨て、ヤスミがなかった私と兆麻を残して夜トは姿を消した。



主様は、夜トを一族殺しの仇だと言った。でも私と兆麻は主様を救ってくれた夜トに感謝している。



陸巴(くがは)の一件で夜トとうやむやに和解した主様を思って、私なりに会う口実を作っているつもりだった。



主様と夜トには、仲良く…とまではいかなくとも、普通に接する事ができるようになって欲しかったから。



神器の身でおこがましいと言われればそれまでだが、前に進もうとしている主様の為に、これが精一杯考えた結果だった。



それがどうやら兆麻にはお気に召さないらしい。最近は小福様の処にいたというだけで厳しい目で睨み付けられてしまう。



巴の一族には、そんなことしないのに。



ずっと二人で巴の一族の先頭に立ち、お互いに奮い立たせて支えあってきた。だから、兆麻の事を好きになるのにそう時間は掛からなかった。



でも、伝えようと思った事はない。主様の負担になりたくないからだ…。



だから、ずっと兆麻への想いを封印してきた。…それをあんな目で睨まれると正直へこむ。



「可愛そうに〜。蒼麻ちゃんは毘沙ぁの為に一生懸命考えたのにね?」



『小福様…ばればれ?』



「あったり前じゃん〜!もぅ、可愛いなぁ蒼麻ちゃんは♪」



尚もなでなでし続ける小福様にされるがままになっていると、夜トがキラキラした瞳で私をみて、私の手を両手でがしりと握った。



「素晴らしい忠誠心!どうか雪音に蒼麻の爪の垢を煎じて飲ませてやってくれ!」



「んだとこの宿無し神!!」



『雪音くんは充分忠誠心あると思いますよ?でなきゃ祝の器(はふりのうつわ)になんかなれないでしょ…』



「何を、しているんです?」



その時、まるで時間がピタリと止まったかのように皆静止してしまった。



ギギギと音が鳴りそうなくらい、ゆっくりと首を縁側の方に向けると、今まで見たこたもないくらいに怒っている兆麻が、そこに立っていた。



『か…ずま…』



「夜ト、その手はなんだ?」



兆麻は絶対零度の微笑みで、何故か夜トを牽制している。



「え、あ、いや…すんませんっしたーーー‼」



『え、えぇぇ夜トぉ!?』



兆麻の微笑みに耐えられなくなった夜トは脱兎の如く逃走した。行かないで!この時初めて夜トにそう思った。








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