たんぺん!

□下心がなきゃ看病なんかしない
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『……どうして』

どうして、わざわざ治療を?

よくよく彼を見てみれば、目の下の隈がさらに濃くなっている。

「…どうしてじゃねえだろ」

『!』

「なんで言わなかった?あと少し気付くのが遅かったらお前、あの世逝きだぞ」

ぎろりと眼光を鋭くするローは冷たい目を私に向ける。

『…ごめん』

言い方はアレでも、本当に申し訳ないと思っている。私が此処で死んだら、ルフィに面目も立たないし何よりいらぬ火の粉をハートの海賊団に背負わせてしまうだろう。

だけど、謝ってもローは納得しなかった。

「てめぇ、俺がつまんねぇ体裁を気にするとでも思ってんのか?んなわけねーだろ。俺が頭にきてんのはなんで毒を盛られて直ぐに俺に言わなかったって事だ」

『………麦わらの海賊団に入ってからは毒を盛られる事なんてなかったし…それ以前はなるべく寝てやり過ごしてたから…』

「野生児かてめぇは。医者くらい行った事あんだろーが」

『……ない。親いなかったし、体調が良くないときは良くなるまで寝るくらいしかできなかったし…』

「…………」

『…だから、ごめん…なさい。迷惑かけて』

段々尻すぼみになっていく言葉に比例して目線も下がってくる。項垂れていると、ローから盛大なため息が聞こえてきた。やっぱり、呆れている。

「体調は」

『…もう全快に近い』

「そうか」

ローはゆっくり立ち上がると点滴が終わっている事を確認し、ゆっくりと私の腕から針を抜いた。

まだ項垂れている私は、もう自身が情けなくてローを見ることすら出来ずにいた。

カチャカチャと点滴を片付ける音が部屋にこだまする。

足音が遠ざかっていく音を聞き、何故かふとこのまま一人になりたくない気持ちが頭を過った。

再び近寄ってきたロー。気が付くと点滴の架台を引いて遠ざかろうとする彼の裾を、無意識の内に引いていた。

「っ!…おい」

『!あ、ごめん…』

するりと手から裾を離すと、手持ち無沙汰になった手だけがまだその位置にいた。ローは再びため息を吐くと、架台を部屋のすみに追いやって再びベッドに戻ってきた。

そして自然な動きで私の手を握ると、何事もなかったかのように私の横たわるベッドに侵入してきた。

『え、ちょっ!』

「うるせぇ、さっさと寝ろ。俺は寝不足なんだ」

『………』

ここに居てくれると、言外に言われた気がして。ローの冷たい手が私の体温でじわりと温かくなるのを感じながら再び目を閉じた。

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