封神演義

□ここで封神して
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太上老君の寝ながら書いたであろう地図を元に降り立った人間界を見て、私は絶句した。

大地は割れ、土や木は腐り生き物は死に絶えている。腐敗臭が漂い水は濁っている。こんな酷い大地では人も動物も寄り付かない。なのに目と鼻の先には人間の住まう人里がある。

これも女禍との戦いの爪痕なのだろうか…。私には解りかねるが老子の命令ともあっては放ってもおけない。

私はとりあえずもともと持ち合わせていた浄化の力を大地に送ってみた。

…が、無反応。どうやらこの現象の根元があるらしい。それを無くさない事にはこの地は改善されない。

私は腹をくくってこの腐敗臭漂う荒れた大地に足を踏み入れたのだった。竜吉公主など一息で死んでしまうだろう汚い空気を肺一杯に吸い込んだ。

注意深く辺りを見渡しながら根元を探す。どうやら水辺のほうにそれがあるような気がしてならない。

私は自身の宝貝を何時でも発動できる体勢をとって水辺へと近付いた。

ドロリとヘドロのような物が漂う水辺は、鼻をつく刺激臭がする。

水生物はみな死に水面に浮いている。

辺りを見渡すと、こぽりぼこりと水泡が立つ場所がある。恐る恐る近付いてみると、水泡がピタリと止まった。

何か、いる?

生き物…ではない。こんな場所には住めないだろう。ならば…

その時、けたたましい水音と共に汚水が滝のように跳ねた。

『っこいつは…』

長い長い胴体は蛇や龍を連想させる。黒い鱗に紫の目玉が八つ頭部についている。そいつはギロリと私を睨むと大きな口を開けて襲いかかってきた。

『こいつが根元…なの…っ!』

避けた所には大きな穴が空いた。どうやら腐った土ごと丸のみしてしまったらしい。

そいつは飲んだ土から独鈷のような物を造り、それを私に差し向けてくる。

全て避けると、私は宝貝 紅錫杖(ベニキリク)を発動させた。錫杖は仏具。邪なものは全て浄化される。加えて私の浄化能力を上乗せしている事から喜媚のもつ如意羽衣同様スーパー宝貝と同列視される宝貝だ。

紅錫杖で巨大な龍の頭部を叩くと、一瞬怯んだ。その隙にもう一撃くれてやろうと跳躍し、紅錫杖を構えると予想以上に回復が早かった龍の牙が腕に刺さった。

『っ…』

鮮血が垂れる腕に構わず、口の中から紅錫杖で突き刺すと雄叫びをあげて龍は消えていった。

ドクドクと腕から流れる鮮血を淀んだ水辺へ流すと、垂れた所からキレイな水へと変わっていく。腐った大地も元の土へ戻り、空気も澄んでいった。

でもじわじわとくる何かに抗えず、私はばたりとその場で力尽きた。

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