封神演義
□だから貴方が嫌い
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貴方はなんの躊躇いもなくその身を犠牲にしてしまう。
なのにそれを犠牲とも思っていない。
犠牲を最小限にっていつも考えているくせに
自分の事は数に入っていない。
自分抜きの最善を
彼はいつも弾き出してしまう。
そんな貴方が
嫌い。
楊「おや、どうしたんです?そんな不機嫌そうな顔をして」
『………これが普通の顔ですけど』
武王のいつものストーキングをひらりとかわし、軽い足取りで西岐城の屋根の上から朝歌方面を見つめている時の事だった。
楊ゼンが哮天犬に乗って優雅に視界に入ってきたのは。
楊「また師叔と何かあったんですか?」
『別に何もないよ』
そう、いつだって私が一方的に彼に言い様のないイライラのようなヤキモキした気持ちを抱いているだけだ。
楊「そんなに気掛かりなら師叔に直接言ってみたらどうです?」
『…これは私の個人的な意見であって価値観を無理矢理押し付ける気はないけど気に入らないのは確か』
楊「…それでモヤモヤしているんですか?不毛ですね」
『優雅に喧嘩売りにきたの』
楊「まさか。僕じゃ君には勝てないよ…まだ、ね」
『いちいち勘にさわる言い方ね』
楊「すみません?」
『……いいのよ、別に言った所で治るものでもないし』
楊「高嶺…」
『…ただ、ね疎外感っていうのかな…よく分かんない。取り敢えず太公望の顔見たくないから避難してる』
楊「…ほどほどにお願いしますね」
世間話もそこそこに、楊ゼンはゆっくりと下に降りていった。
みんなは不思議に思わないのだろうか。
太公望は確かに皆がビックリして、誰も予想が出来ないような策を練るのが得意かもしれない。
でもそれは悪魔で皆にとってで…そこに太公望は入っていない。
その身を犠牲にし、腕を無くし、心を痛めても…本当の意味で彼の痛みを理解してくれる人が果たして何人いるのだろう。
本当は誰も信用していないんじゃないか…
そんな事、あるわけないって頭では分かっているのに
胸の中のぐちゃぐちゃはなくならなかった。
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