夢の中の君を探して

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キャラ付けの影響バリバリ受けている幼女真澄ちゃんです。そして、泣きながらパンを食べ終えて、恥ずかしさで死にたい真澄ちゃんです。

見た目は8歳の中身2X歳な私は、どうしたって純粋な8歳児には慣れなかった。…表には出さないけど。


「もう大丈夫か?」
「……はい」
「うん。じゃあ、ちょっと辛いことを聞いてしまうが、答えてくれるかい?」
「……わかりました」


食卓にあった皿を流し台に片付けて、泣き止んだ私を見つめる目は温かく、恐怖を感じさせない。


「何で君は此処に来たんだい?よく見ると服もボロボロだ」
「……お父さんと、お母さんから逃げたの。いつも私を叩くから、嫌になって出てきた」
「………そうか」
「れから無我夢中で走って、森の中に入ったら泉を見つけて、チョロマツ様に会いました」
「チョロマツ!?君は女神に会ったのか!?」
「うん。それで何かね、私の魂が天使候補で綺麗なんだって。だから悪魔に狙われるから、この教会にいる神父様を頼りなさいって教えられて、此処に来たの」


正直に全部話したら、何かを考える素振りを見せて無言になる。チョロ松の言った通りにカラ松は女神の存在を知ってたようだし、本当に何とかしてくれそうな雰囲気だ。というか頼れるのカラ松しかいないし、幼女なんで助けて下さい。

幾分か考えたあとに、一つ提案だと笑った。


「一緒にこの教会で暮らさないか?」
「いいの?」
「というか、女神は俺に君を守れとお達しのようだ。天使候補の君の魂は悪魔にとったら極上のスイーツ…しかも力を増大させてしまうからな」


悪魔の皆さん……私の魂、汚れきってますよ!?だって中身2X歳の廃れた大人ですもん!純粋な8歳児じゃないよ!

そんな事を心の中だけで叫び、表面上はカラ松に「これから宜しくお願いします」と冷静を装って頭を下げていた。


「となると…君の服やもろもろが必要だな」


あ…どうしよう。お金ない。八歳の女の子が大金を持ってる筈もないし、ましてや逃げてきたんだ。
……あれ?逃げてきたけど、この世界に警察っているの?捜索願いだされないかコレ。

サァッ…と血の気が失せて、身体が震える。おかしい様子の私に気づいたカラ松がどうしたんだと気遣った。


「私、逃げてきたから……探してるかも」


チョロ松が言うには、親が暴力を振るうようになった原因が悪魔が取り憑かれたからだ。小さな私が暴力を振るわれるようになったのは、ここ一年くらい。
前から親に良く思われて無かったっぽいけど、それでも普通の食事と生活を与えられていたんだ。

悪魔が憑いた親が来る。私を殺して魂を得るために。


「それは俺が何とかしよう」
「本当に?本当に大丈夫なの?次の日に幼女誘拐のロリコン神父って一面飾らない?」
「何処でそんな言葉を覚えた!?」
「それに悪魔が此処に来たら……神父様、殺されるかもしれないんだよ」


私が懸念している所はそこだ。前回、前々回とカラ松は死んでいる。夢を終わらせる条件として【カラ松を殺す】なんて鬼畜事項だとは思わないので、多分だが回避してエンディングに持っていく事が出来ると考えている。

一番死亡フラグが立っている夢だけど、今度こそ三度目の正直でハッピーエンドに持っていきたい。無理なら最悪デッドエンドじゃないバッドエンドでもいい。幼馴染が死ぬ姿は…もう嫌だからね。でも助けて欲しいので、自分から離れる選択が出来ないのが憎い。


「リトルレディ……そんな顔をしなくても、俺に全て任せればノープロブレム!」
「何処からその自信が出てくるの」
「フッ………俺は神父だ。だがそれは仮の姿!本当の姿はバッドデビル達を天に還すエクソシストなのさ!」


最後に自前だろう決めポーズをしっかり決めて、私にウィンクをする。私はというと、新たな単語を飲み込むのに時間が掛かった。

エクソシスト…悪魔祓い師の人達を指す。なるほど、なるほど…神父だけど悪魔祓い師でもあるんだ。へぇ〜…


『すごいね!?』

「フフンッ…。そうだろう?こっちじゃ結構有名で、実力はお墨付きさ」


今回のカラ松、チートかもしれない!チョロ松も居るし、カラ松自身も強いらしいから生き残れるかもしれない。これから私もカラ松からいろいろと護身術的なの学んで、自分を守れるようになったら…もっと生存率が高くなるはず!
希望が見えてきた気がした。


「この教会に結界はあるが少し心許ないな。女神を呼ぶとしようか」
「呼ぶの?」
「君を連れて買い物に出掛けるのは、悪魔に【どうぞ襲って下さい】と言っているようなものだ。俺は実力はあるが完璧に守りきれるか分からない。……それにしても、よく今まで生きてこれたな」
「それ、チョロマツ様にも言われました。あと守護天使がどうとかも……」
「守護天使か。それなら君が生きていたのにも理由が出来るが…見たところ、何の繋がりもないようだな」


ふむふむ。この一年暴力を振るわれるようになったのは、その守護天使が何かしらの原因で居なくなったからかも。でも、何で守護天使が居なくなったのかな……。


「という事で、良い子にお留守番出来るかな?」
「大丈夫です。慣れてるから」
「……そうか。遅くなるが絶対に帰ってくるから、心配しないで待ってなさい」
「わかった」

一つ頷くと、彼は首に掛けていたのを外して右手に持った。ポケットから小瓶を出して、中の透明な液体を持っていた十字架に垂らし、何やら呟く。十字架が媒介になっているようで、光の粉が溢れたと思ったら人の形へと変貌し、先程会った女神が宙に浮いた状態で現れた。


「早速お呼びですか」
「俺が出掛けて居る間、この子を見ていてくれないか?」
「そうだと思ったよ。……任せなさい。貴重な天使候補を、低俗で非道な奴等に渡すつもりはないからね」


二人の間で着々と話は進んだようで、私はチョロ松と二人でお留守番らしい。


「これは真澄が掛けているんだよ」


十字架を首に下げてくれて、また頭を撫でる。……今の私は幼女だからね。それに嫌悪感を感じるわけでもないし、寧ろ安心の塊というか、何だか眠くなる手だ。


「じゃあチョロマツ。宜しく頼む」
「気をつけて」


サッと何処からだした鏡で身嗜みを確認して、聖書を片手に勝手口から出ていこうとする彼を、つい椅子から降りて服を掴んで引き留めていた。

「?」
「……あの、ちゃんと帰ってきてね」
「……」


無反応になったカラ松。次の瞬間に私からバッ!と顔を背けて「行ってキマス」と後半片言のようになり、足早に外へと出ていってしまった。引っ張られる前に手を離したから良かったけど、危うく引きずられる所だったよ。


「……大丈夫かな」
(顔真っ赤……これはロリコンになるのも早いかも)


さて私は待ってろと言われた訳だけど……。チョロ松にいろいろ聞いて、この教会内の散策でもしようかな。


「チョロマツ様。この教会の中を見て回っても良いですか?」
「ん?ああ。特に禁止している部屋は無いから大丈夫だと思う」
「ありがとうございます!」
「というか……お前の自然な話し方で良いよ」
「えと、じゃあ…ありがとう、チョロマツ様」
(……可愛いな。勿論、小動物みたいな感じで)


とりあえず教会内の把握だ。ちなみに、媒体になっている十字架の半径10メートルが彼の行動範囲らしい。行動制限はあれど、女神様の力は強いので遠くからでも攻撃できるし、元から彼の専売特許は守りの方なのだそうだ。

だけど彼が実体化してられる時間というのも、やはり存在していた。
聖水は呼ぶ時のスイッチみたいなもので、実体化するのに使うエネルギーは女神様自身のもの。悪魔と戦ったとして、その時に神通力を消費するほど実体化出来る時間は短くなるらしい。それに神通力が空っぽになったら、回復するのに3日間は泉から出られないとか。
ただ何もない場合は1日くらい余裕で居られるから、安心してと頭を撫でた。私が幼女だからか、すごく頭を撫でてくる…。


教会は聖堂と児童図書が置かれた多目的室が広いだけで、居住区部分はキッチンがあるリビングルーム6畳間くらいとカラ松の私室、使われていない殺風景な4畳間の部屋に、お風呂とトイレと物置くらいとコンパクトだった。小さい教会らしいし、居住区はそんなものなのだろう。よくわからんが。


だいたい見て回って、ちょっと疲れた気がしてあのステンドグラスが見える綺麗な聖堂の椅子に座って一息つく。


「……気になってたんだけどさ」
「なに?」
「お前姿勢良すぎじゃない?一回も背もたれに身体を預けてる所を見てないけど。それに身体の動かしかたに違和感あるよ」
「……」
「……………お前なぁ……怪我してるなら早く言わんかい!ちゃんと怪我してるって自己申告しろよ、ちょっと見せなさい!」
「え」

チョロ松に立てと言われて素直に立ってしまったが、神様だからと言って男の人に背中を見られるのは恥ずかしい。8歳だからってナメんなよ。こちとら中身2X歳の立派なレディなんだぞ!


「はい。後ろ向いて」
「んわっ!?」


無理矢理後ろを向かされて、ワンピースの背中のチャックを下げられ、慌てて無い胸を曝さないようにしっかり前で押さえた。


「……酷いな」
「え、そんなに?」
「こんなにも赤黒いのと紫が混ざったのが肌色より多いって何?って感じ。寧ろよく泣かずに我慢出来たな。僕が知る人間の子ならぴーぴー泣いてるレベルだぞ」
「大丈夫だよ。じっとしてればそんなに痛くない」
「おい。じゃあ歩いてた時は痛かったんだな?」
「……」


黙秘権を行使します。


「はぁ…ったく。言わないお前もお前だけど、気付かないとかあの鈍感め。確か救急セットがカラ松の部屋にあった筈だから、そこに行くよ」
「神父様が居ないのに、勝手に入ったら怒られない?」
「それくらいで怒る人じゃないよ。抱えられそうに無いから、ちょっと歩いてもらうけど平気?」
「大丈夫。歩けるよ」


チョロ松が鋭すぎるんだよ。あとで自分でやろうと思ってたのに…。

下ろしていたチャックを上げてくれて、カラ松の私室へと行く。その扉の前に着いてしまうと、本当に開けても良いのかな?と迷いチョロ松を見上げると、フワフワ浮くのを止めて降り、さっさと開けて中に入った。その後に続いて部屋に入ると、ゆったり寝れそうなベッドと、脇には小さなテーブル。聖書とかが並べられた机に、奥行きのある本棚とクローゼット…それから窓台には鉢植えの育て中のミニバラがある。

本棚の空いているスペースに救急セットがあったようで、それをチョロ松が取ってベッドに座った。おいでと手招きされて渋々隣に座り、斜め後ろに身体を向けた。


「良い子だね。えーっと……湿布……湿布は……あ、この下の引出しか。この湿布、ちょっと冷たいらしいから驚くかも」


冷湿布が作られている……記憶には古い洋風の建物で中世ヨーロッパ時代かと思ったけど、そんなのは関係ないファンタジー世界だから、現代のものとかごちゃ混ぜに存在してるっぽいな。

貼られるとお馴染みの感覚なのに、やっぱり身体は少し驚いてビクついた。二枚程大きな湿布を背中に貼ってくれて、取れないようにと医療テープで固定。腕は片方ずつ服から出して見てもらい、自分も初めてハッキリと見たが……殴られたものより、切り傷が多いのは何で?
また新しく記憶が追加されて、これらは皿や本とかを投げつけられていたからなんだと、嫌な映像をプレゼントしてくれたものだ。これでよく1年間生きてこれたよ。世間の目とかあったから、人間の理性がそこにストップを掛けて悪魔を抑えてたのかな。


「それにしても…チョロマツ様は神様なのに、手当てが上手だね」
「カラ松が自分で手当てしてるときに見て覚えただけ。初めてだよ、こんなことしたのは」
「へぇー…器用なんだ。神様でも怪我するの?」
「するよ。悪魔と戦うなんてしょっちゅうだからね。だけど怪我しても、僕なんかは泉で休めば勝手に治る」


「はい。他に痛い所は?」なんて聞かれて下を見る。お腹を守るように丸まってたから、背中をたくさん殴られていた。だけど、その時に晒されていた太もも辺りも結構……。あ、何かもう見るのもヤだな。


「痛くないけど……たぶん太腿の外側、怪我してる」
「ん。ちょっと悪いけど見せて」


下着が見えないようには配慮してくれて、スカートが上げられる。右はそうでも無かったが、左には青い打撲痕が広がっていた。青いということは治りかけなんだろう。背中に集中していたようだし、最近は足も庇うように丸まってたんだ。


「……チッ。クソ悪魔ども、見つけたら絶対に殺す」
「え?」
「治りかけでも一応湿布貼ろうね」


こっちのチョロ松も、女神なのに口悪いな。
でも彼のその一言は小さな私を案じての発言だから、物騒でも嬉しい事に変わりはない。

綺麗に手当てされて、湿布臭いけどそれは我慢。心なしか痛みも和らぎ、チョロ松に手当てしてくれたお礼を言うと、カラ松同様に優しく目を細めて「どういたしまして」と返ってきた。



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