夢の中の君を探して

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カラ松が帰ってくるまでやる事が無いから多目的室で児童図書を読んでると、チョロ松が暇そうにしてるので早々に止めて話す事にした。

チョロ松達神様の住む天界があって、そこで一番偉い神様が天使候補を選んでるとか、その天界には何があるのかとか、なんで泉で暮らしてるのかとか…聞いてばかりで申し訳ないけど、チョロ松の話は面白かった。


「悪魔ってどうやって人間の魂を奪うの?人間に憑いて襲うか契約だけ?」
「低級の悪魔は人間に憑いて襲うだけだけど、中級と上級になると実体化出来て直接襲う事もある」
(直接もあるのか……)
「でも、そんなのは大抵契約を求める奴等ばっかりだよ。アイツらも暇な連中だから、面白いと思って契約するんだ」
「……そうなると、厄介なのは低級の方だね」
「でも低級の力なんて人間を全部操れないものだよ。運が良ければ乗っ取れるけど、普通は負の感情を増幅させるくらい」
「それでも非力な子供は何も出来ない。私は運が良かったけど、どこか知らないところで…悪魔のせいで暴力を振るわれている子が居るかもしれない。そう思うと低級の方が悪魔らしいね。人間に人間を殺させるんだから。それでなくても…人間は人間で争うのに」


気づけば子供らしからぬ発言をしてしまった。前回の警察での正義感が残ってたのかな?チョロ松といえば無言になってしまって、目を見開き固まっていた。
やっちゃったなぁ…と思いつつ、笑って誤魔化そうとした。


「……確かに低級の方が悪魔らしいのかもね。ごめん。真澄はその雑魚どもに殺されそうになってたんだよね……ちょっと無神経だった」


おい。サラッと雑魚呼びしたぞこの人。まあ上手く誤魔化せたというか、私が子供らしくない子だと認識したのかはわからないがそう言った。
そして当たり前のように私の頭を撫でて、最初は申し訳なさそうだったのにだんだんご満悦らしく顔をデレデレとだらしないものにしているのは、私をペットか何かだと思ってません?

そしてこうも撫でられてると眠くなる。安心したのかな…カラ松の手も安眠作用があった。


「……チョロマツ様。眠くなるので、もう大丈夫です」
「眠いの?えっと……カラ松の寝台しかないか。そこまで行こう」
「いえ。神父様が帰ってくるまで起きてるので、撫でるのを止めてくれれば……」
「ダメです。お前は子供なのだから我慢せずに寝なさい。本当は疲れているのに、ここで気を張ってばかりじゃ倒れるよ」
「でも……寝たらチョロマツ様とお話出来ない」
(キュンッ………控えめに言っても天使かよ)


私が寝たらチョロ松、絶対に暇になるよ。本を読むわけでも無いし、十字架から離れられないから気分転換に何処か行くとか自由に出来ないし、泉に戻れないから暇になっちゃうよ。ニートのチョロ松も確かに暇そうだけど、ライブとかグッズを買いにとか意外とアグレッシブで充実してたし、長く生きている神様はもっと暇なんだと思う。

それを放置するのって、もはや拷問じゃないかな…考え過ぎ?


「眠いでしょ?」
「……眠くない」
「はい嘘だね」
「でも起きてられるよ。それに神父様のベッド使うのも何だか悪いもん」
「子供が何を気にしてるんだか…。仕方ないでしょう。寝台は1つしか……」


そこで私は……いや私達の脳はあることに気づいてしまった。ベッドは1つしかない。それはカラ松神父様のだけだ。
いやいや待って。もしかしたら物置に客用の布団くらいあるんじゃないか?あはは……この世界にそんなもの在るのかな?

記憶にあるのは床で毛布に包まれて眠る小さい私だけだった。家族はベッドで寝ている、なんとも悲しい映像だった。……泣ける。

もうこの際、床で寝よう。ベッドなんて直ぐに来ないだろうし。


「……床で、」
「そんな事、僕もカラ松も許しませんよ」


デスヨネー。子供にそんな事するわけないよね、知ってた。この問題はちょっと隅に置いて、カラ松が帰って来てから要相談だ。

……まさかベッドが1つしかないとか、今更気づくとは思わなかったな。しかも床で寝るのが当たり前と、キャラ付けの影響で頭がちょっと鈍ってたようだ。


「一気に目が覚めた思いです」
「僕もだよ。アイツどうするつもりだ。(もしかして一緒に寝るつもりだった?え、相手は女の子だよ。さっき手当てした時に恥じらうような立派な女の子だぞ。無理じゃない?……落ち着きなさいチョロマツ。相手は子供です。ロリコン神父でもなければ不埒な事は致さないと……いや不安しかねぇよ!?ちょっと上目遣いされただけで真っ赤にした奴が、手を出さないとか言い切れねぇよ!)」
「……チョロマツ様?怖い顔してどうしたの」
「真澄。貴女の事は私がちゃんと守りますからね」
「あ、ありがとう……?(なぜ女神モード?)」


笑ってるのに怖い威圧感で女神口調(敬語)になったチョロ松。もしかして悪魔が近くにいるのかなと怖々と周りを見たが、何の気配も「結界が破られた!」的な台詞も飛んで来ないので、彼の中で何か想うことがあったのだろう。



寝ずにチョロ松と話し、日が落ちてリビングに移動し電気を付けて椅子に座ってカラ松を待つ。いつの間にか壁に掛けられている時計は8時少しを示していて、コツコツと秒針が正確なリズムを刻む音が響いている。


「……遅いね」
「心配しなくても、僕の予想ではもうすぐ帰ってくるから」
「こんなに時間掛かるって分かってたの?」
「買い物もそうだけど、エクソシスト教団の支部に真澄の事でも報告しているんだろう。警察と教団は深い繋がりがあるから、保護する上でいろいろ手続きしてるんだろ」
「……だから「大丈夫だ」て、言ったんだ」


そこで勝手口からカチャリと鍵の開いた音がして、次いでにドアが開いて、この教会を管理している神父様が帰って来た。
手には大きな袋を五つ提げていて、笑顔で「ただいま!」と言う彼。


「お帰りなさい」
「おかえり。すごい荷物だね」
「殆どは教団の支給品だ。低級悪魔くらいなら近づけさせないよう施した修道服を頂いてきた。こっちは足りなさそうな日用品だ。俺が買ってきたのは、よそ行き用3セットくらいだな」


机の上に置いて袋の中身を説明していくカラ松。店員さんが薦めたらしい服は女の子というイメージで可愛いらしいワンピースやスカートもの。普段は修道服を着るわけだし、そんなに必要性を感じないからそれくらいで良かった。肝心の下着も、適当に店員さんに任せて見ずに購入したと言ったのでグッジョブだカラ松。


「遅くなって悪かったな。お腹空いただろう?いま作るからな」
「うん。あ、手伝います!」
「んー……手伝うと言っても、サンドする具を作るだけだからな」
「こいつ出来合いのもんばっかり食って、料理あまり出来ないんだよ。ちゃんとやれば出来ると思うけど、料理本を買ってまで勉強する気がないからレパートリーないの」
「……チョロマツだって作れないだろ」
「僕は神様だからお腹空かないし、食べるのは趣味みたいなもので必要ないからいいんだよ」


ここのカラ松も料理出来ないのか。勉強すれば出来ないこともない、つまり下手ではないようなので気力の問題なんだろう。神父なんだから、神様に感謝して自分でも食材調理出来るようになれよそこは。

苦笑いしている彼だったが何かに気付き、私に顔を近付けてきてドキッとした。

「湿布の匂い…?」
「今頃か。真澄が怪我してたから勝手に救急セット使わせてもらったよ」
「怪我!?あ、叩かれてたって……!ああ天なる神よ!この罪なる私の過ちをお許しください!私はか弱き子羊の痛みに気づかず見過ごしました。ましてやこの時まで知らなかった無知なる私をどうか!」
「落ち着けバカ!」


突然手を組み祈りだしたカラ松。そしてそれをチョロ松に頭を叩かれた事で止め、叩かれた部分を押さえながらうめき声を上げている。彼は暴走すると懺悔する体質のようだ。


「うっ……うぅ……痛かっただろう?ごめんな、気づいてやれなくて」
「どちらかというと、今の神父様の方が痛そうです。たんこぶ出来てるけど大丈夫ですか?」
「………チョロマツ。この子は天使か?」
「紛れもない天使だよ」
「人間です!」


真顔で言ってくる二人の本気が見えた。ロリコンか?二人揃ってロリコンなのか?


「私も手伝うので、スープくらいは作りましょうよ。チョロマツ様も一緒に食べる?」
「真澄は料理出来るの?」
「(出来るけど、記憶ではやったことないな)見てたから出来る」
「やった事ないのに無理でしょ」
「出来るよ!」
「いや無理でしょ」
「……真澄。チョロマツの事をなんと呼んでる?」
「え?……チョロマツ様」
「じゃあ俺は?」
「神父様」
「何で神父!?これから一緒に住む……つまりファミリー!その様な間柄になるというのに、何故俺の事を名前で呼ばないのだ!そして何故に敬語!?」


あれ?本当だ。カラ松のこと、いつの間にか神父様って呼んでるや。無意識だったということはこれもキャラ付けの影響かな。

でも神父様呼びの方がしっくりくるんだよね。敬語なのもそれ。


「……だめ?」
「可愛いが俺は名前で呼んでほしいし、遠慮もしてほしくない」
「そっか……じゃあカラ松様。一緒に料理しよ」
「する!」


やっぱりロリコン……待て待て決めつけるのは良くない。カラ松は子供好きなのだ。前の夢でも孤児院やるくらいなのだから、そうに違いない。

「ンン〜?俺を見つめてどうした」
「……カラ松様はロリコンなの?」
「なっ、何て事を言うんだ!俺はちゃんと大人のレディが好きだ!」
「ご、ごめんなさい……私にすごく良くしてくれるから、そうなのかなって……」
「ああ……そんな顔をしないでくれマイエンジェル。怒ってないから…………さっきも言った通り、俺達は家族になるんだ。年齢的にはシスターかな?可愛い俺の妹に良くするのは当たり前だろう」
「……妹」
「だから、たくさん兄に甘えてくれ。今までの分たくさん慈しもう」

ふと神父様のような事を言う(いや神父なんだけどね)。
そうか……『妹』か。

「うん。これからよろしくね、カラ松兄様」
「〜〜っ控えめに言っても可愛い」
「ロリコンの次はシスコンか」

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