長編

□運命の人
14ページ/20ページ



「これから面接をします。題して"結婚できそうな男決定戦"です」
「面接官は父さんと母さんでやる。これから質問していく内容に真澄ちゃんが答え、最後にお前達に自己アピールしてもらうぞ」
「それではよろしく御願いします!」
「「「お願いしまーす!」」」
「よ、よろしくお願いします……」


結婚できそうな男=孫保証。両親の思惑は一番有力な息子を見定め、これからも扶養していくか、投資をするかの判断基準にするため、急遽思いついたこの面接。ニート達は何となくその思惑を感じているからか、その表情は真剣だ。
面接官二人が前に、後ろには六つ子と挟まれて異様な緊迫感がある。


「それでは最初の質問です。真澄ちゃん。一人一人の良いところを教えてください。まずはおそ松から」
(俺かぁ…)
「は、はい!えっと……おそ松さんは話し上手です」
「ほう…」
「話す内容が面白いというのもあるんですが、ちゃんと私の事を聞いてから反応を返してくれるんです。だから会話も続き、とても楽しいです」
「……へへっ。そうなんだぁ…やっぱ俺ってばカリレジェだからな!」
(((誰だよそいつ。絶対偽物だって)))
「なるほどねぇ。次にカラ松は?」
「カラ松さんは……一言で言うなら紳士だと思います」
(((紳士!?)))
「約束を守ってくれて、私が困ってたらちゃんと言葉で伝えて手を差しのべてくれる人です。フェミニストとも言うかもしれませんが、私は紳士だと思います」
(((それ真澄ちゃん限定じゃない?)))
(紳士!!!!真澄にそう思われているとは…フッ。頑張った甲斐があった)
「なるほどなるほど……チョロ松はどう?」
「チョロ松さんは教えるのが上手いです。相手に伝わるように噛み砕いて話してくれるので、世間に疎い私でも分かります」
(うわっマジで!?教えるの上手いんだ僕……)
「教えるのが上手いっと……一松は?」
「一松さんは真面目というより、律儀って言葉が似合いますね」
「え…!?」
「会う前にちゃんと電話してくれますし、約束の時間よりも早く来てベンチで待っててくれたり…あと、この前はおばあちゃんが降りるまでエレベーターの開ボタンを押してたのを見て、律儀な人だなって思いました!」
(ベタ褒めじゃねぇか!!死ぬ!もう俺死ぬわ!いい人生でした!ありがとう!)
「そうなの……一松。死んだらあんたの恥ずかしいエピソード全部真澄ちゃんに話すわよ」
「タダイマ(シャキーン」
(一松が一番褒められてる!?いや、俺も紳士だと言われたんだ。まだファーストクエスチョンだから)
「十四松は?」
「十四松さんはいつも笑顔で周りの人を和ませてますね。ちょっと元気が良すぎますが、憎めない愛嬌があります」
((あー……ちょっと分かるかも))
「それじゃあ最後にトド松」
「トド松さんは流行りに敏感で、美味しい店とか可愛いものとかよく知っていて驚きました」
「ふふん。まあね♪」
((ケッ…))
「しかも下調べで一度その店に行き、それから友達に紹介するんです。慎重で気遣い屋さん何だと思いました」
((そいつ合コンの為に隠れてバイトするような奴ですが?しかもバレたし))
「…あ、そうなんだ……ふーん…(ヤバい。何かグッと来た)」
「ふむふむ」


ホワイトボードに横6人の名前が、縦に質問という感じに書かれており、それぞれ話し上手、紳士、教えるのが上手い、律儀、元気で愛嬌がある、慎重・気遣い屋と一つの項目が埋まった。


「……さて。じゃあここは直してほしい所ってあるかしら?」
((ダメ出し来ちゃった!!))
「直してほしい所……」
「はい。またおそ松からね」


直してほしい所と言われて首をもたげる。彼らは十分優しいし、いい人達だ。確かにちょっとダメな所はあるが、それを踏まえて彼らの魅力になっているし、個性だと思う。


「遠慮しなくて良いわよ」
「そうだとも。真澄ちゃんが言うことで、少しは直そうという気になってくれた方が、此方としても嬉しい事だからな」

本当に言ってもいいんですか?と後ろを振り向くと、少々青い顔をしながらどうぞと頷いたので、それじゃあと口を開いた。


「……おそ松さんは女の子に対する言葉というか……男の子同士の感じで誰かれ構わず話すのでその…」
「デリカシーが足りないってことね?」
「そうなります……」
「ふーん。まあよく言われてるけど、そんなに足りない?」
「足りねぇよ!」
「デリカシーのデの字もないよね」


うんうんと一様に頷かれて、おそ松もそんなに?ともう一度訪ねたが、また強く頷かれていた。


「カラ松さんは優し過ぎですね」
「ハッキリ言った!?」
「でもこれダメ出しか〜?」
「優しいのは良いんですけど…何だか相手をダメにしちゃうようで、それが当たり前になっちゃっいそうで、私は加減してほしいと思ってます」
(うん。それもあるけど一番の欠点指摘されないってどういうわけ?)
(それがチョロ松兄さん。真澄ちゃんはイタくないらしいよ)
(ギザだってよ。今のところクソタンクトップとか、クソファッション完成版見てないからな)
(マジかよ!?)
(クソ松ばっか贔屓されてんじゃねぇか)
(ホントカラ松ばっかり……カラ松?)

(優し過ぎてダメになりそうって!俺でダメになってもいいのに。そしたら………可愛い過ぎかよ〜っ!!!?)

(((…イラッ)))


顔を片手で隠し顔を真っ赤にしているカラ松に、皆の冷ややかな嫉妬が混ざった視線を浴びせているが本人は気づかず。勿論、そんな後ろに気づく訳がない彼女は少しずつオブラートにつつんで答え言った。

ダメ出しの欄にはデリカシーがない、優男、没頭すると周りが見えなくなる、卑屈、落ち着きがない、あざといとなった。書き方が悪い!という意見もあったがそのまま次の質問へと移っていく。

第一印象は?尊敬しているところは?とここまで4つ質問してきて、ダメ出し以外は精神的に優しいものであった。最後にと松代が出したお題は…


「もしもニート達が結婚したらどんな風になると思う?何でも言ってちょうだい」
((本題きたなぁ…))
「そうですねぇ……おそ松さんなら楽しいけど、喧嘩も多くなりそうです。気の多い人なので奥さんは大変かも」
「俺けっこう大事にすると思うけどな」
「どの口が言うんだよ」
「あと、子供と仲良く遊んでくれそうかも」
「中身小6で止まってるような奴だしね」
「はあ?ちゃんと成長してますぅ。何なら俺の見せてやろうか?」
「やめろよな!?そういう所がデリカシーないんだよ!」
「……子供といえば、十四松さんなら野球を教えて、チョロ松さんは娘だったら溺愛しそうです。一松さんは最初は戸惑うだろうけど、隠れ親バカみたいになるかも。トド松さんもいろんなお洒落な服を着せてあげてそうですね。カラ松さんは……」


カラ松さんは絶対に子煩悩になります。奥さんもちゃんと愛して、幸せな家庭を作れると思います。
……そう思ったのに、何故かそのビジョンが上手く想像出来なかった。


「カラ松さんは……子煩悩になりそうです。いいお父さんになれると、思いますよ?」


友達の結婚後って、意外にも想像しにくい事だとは思わなかった。いや、カラ松さんが優しいのは十分わかっていて、何で想像しにくいんだろう?おそ松さん達は何となくこうなるだろうて、パッと思いつくのに……不思議だな。


「フッ。勝ったぜ!」
「いや勝ち負けなんて無いから!」
「なに勝ち組気取ってんの?まだ勝負はついてないよただの"友達"が」
「ぐふぅっ…急所をつかないでくれトッティ」
「野球したいって!?」
「いや結婚したら子供に野球教えてるだろうなって事だよ十四松兄さん」
「…?」
「うん。まだわからなくて良いよ」
「…えっと、続けた方がいいですか?」
「……母さんや」
「ええお父さん。もう十分よ、ありがとう真澄ちゃん」
「そ、そうですか?おそ松さん以外まだそんなに言ってないんですが…」
「一番聞きたいことが聞けたからもういいの。……あんた達」
「「「はい!」」」
「私ね、真澄ちゃんほど良い子は見たことないの。あんた達には勿体ないほどの子だわ」
「あー……まぁ…」
「それを親から言われるのはちょっと…」
「自己アピールとか結婚できそうな男決定戦とかもういい。真澄ちゃん、うちにお嫁に来て!」
「「「はいィィイイイ!?」」」
「……へ?」
「父さんも賛成だ。可愛い娘が出来るなんて楽しみだなぁ」
「ま、待ってくれマミー&ダディ!俺達はまだ友達で、彼女の気持ちもそんなんじゃ…」
「あら今すぐとは言ってないわよ。でもあんた達のクズな面を見ていて、ここまで良いところを言える人が他にいる?」
「確かに居ないね」
「いないね!いないよー!」
「……別に俺は興味ないし、結婚とか…想像しただけで無理」
「ねえ真澄ちゃん。少しは考えてくれないかしら?」
(聞いてねぇな松代…)
「あのな!母さん俺達は…」
「松代さん。私は今の関係だけで、凄く満足しているんです」
「……」
「私は……友達としてしか見れません。それに、カラ松さん達にはもっと私よりも、もっといい人を見つけられると思います」
「私は真澄ちゃんが気に入ったから言ったのよ?」
「すみません。その言葉は嬉しいのですが、あまり恋愛とかよくわからなくて……」
「…わかったわ。気長に待つとしましょう」


そう言って、よくわからない面接が終わった。松代さんと松造さんに気に入られたのは嬉しい。けど私には…友達が一番離れず、かと言って近すぎなくて私には丁度いい。

松野家の居間を元通りに家具を戻していると、肩を叩かれて振り向いた。

「真澄。マミー達のことは気にしないで大丈夫だからな。それに疲れたんじゃないか?」
「少し……でも楽しかったですよ。本当にカラ松さんのご両親面白いですね」
「ははっ、今回は突拍子も無いことばかりですまないな。どうだろう…俺達の部屋に行かないか?」
「いいんですか!見たいです」


少し気持ちが何故か沈んでいたところに、部屋を見せてくれるというのに興味が移って私はまた笑顔を見せた。

うん。何でモヤモヤしてたのか分からない。こんなに素晴らしい友達がいて、何が不満なんだろう。

カラ松さんに続いて、私は2階に上る階段に足を踏み出した。


「やっぱりカラ松が有力なようね」
「カラ松に1点プラスだな」
「「え!まだ続いてるの!?」」


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ