長編

□運命の人 番外編
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三男side



次男が入院していて、その時の同室が19歳の女の子。儚げ美人の可愛い子で、しかも入院していた間にあーんや、手を握って慰めてもらったとか(これは僕らが悪かったけど)いろいろとお世話になってたらしいけど…


それなんて乙女ゲー展開?


弱っていた次男はその優しさにうっかり恋に落ちてるし…。


まあ、そんなポンポンと僕達が進展させるわけが無いよね。

次男も運が悪い。エスパーにゃんこがペラリと喋らなければ、少しは時間稼ぎ出来たのだろうけど、バレたら抜け駆けは無し。だって…


真澄ちゃんって本当にいい子なんだもん!


僕達がニートだって言っても、私も似たようなものですという神対応!カラ松から聞いていたけど、幼い頃から心臓病を患っていて、僕には想像のつかない発作を何回も闘っている彼女は僕らよりも圧倒的に人格も立場も上だ。それなのに謙虚で温かい…そんな子が僕を認めてくれて「にゃーちゃん好きになりました!」というあの笑顔!

もう女神だよ〜〜〜!!



「チョロ松さん。ここの合いの手の順番なんでしたっけ?」
「ああそこはね。アメショ、ペルシャ、ミケ、マンチカン、スコ、シャル、ロシアンブルーだよ」
「えーと…………アメショ!ペルシャ!ミケ!マンチカン!スコ!シャル!ロシアンブルー!」
「グハッ…!」


もう一度合いの手を入れる為に、わざわざその場面に映像を巻き戻して再生。猫の手を作って僕が教えたように合いの手を入れる彼女の可愛さがカンストした。


「ふふ。こうやって元気を与えてくれるアイドルさん達って凄いですね」
「そうなんだよ!元気もくれるし嫌なことがあっても励まされるし、僕がいま頑張ってられるのもにゃーちゃんの存在のおかげなんだ」
「……本当に好きなんですね」
「もちろん!……て、僕ばっかり舞い上がっちゃってたね」
「いえ。とてもイキイキしていて、本当に好きなんだなぁ…とちょっと羨ましいなと思いました」
「真澄ちゃんは何か夢中になるようなものって無い…のかな?」
「そうですね…好きにはなるんですけど、それ以上といのは難しくて。私はどこか冷めてるんです」


そう言った彼女はひたすらに画面の中のにゃーちゃんを見ていた。微笑んでいるのに言葉は悲しげで、どうしても気になってしまう。

何か言おうとしては、表面上の薄い言葉を投げかけても彼女には響かないだろうと思い、視線をキョロキョロさせて泳がせてばかりだ。


「すみません…気分を害してしまいましたね」
「ぜ、全然大丈夫!ただ…あー…何て言うか……そう言うのはまだ、君の中で見つかってないだけじゃないかな?」
「見つかってない?」
「うん。僕は夢中になれるものがたまたま見つかっただけ。真澄ちゃんの世界が普通よりも小さいからまだ見つけてないと…僕は思う…けど」


途中から凄く恥ずかしい事を言っている事に気づいて、最後の方は声が小さくなった。

あぁああああああ!
ニートが一丁前に何を言ってんだよ!

「……そっかぁ……私、まだ見つけてないんですね」

そっかぁ…と言葉を繰り返して、僕の言葉を何度も思い返してくれていると思うと、唐突に頭を撫でてあげたくなった。

つい手が伸びて彼女の頭にソッと触れ、数回髪の流れに沿って動かせば、キョトンとした彼女と目が合いすぐに謝って手を引っ込めた。

何してんだ俺は!?


「……カラ松さんと似ているのに、ちょっと違うんですね」
「え、カラ松?」
「以前してもらったことがあるんです。カラ松さんて、本当にお兄さん何だなって……手つきが優しくて安心したんです」
「そ、そうなんだ…」

おい。うちの次男ちゃっかりアプローチしてるし、彼女にも触れているんですけど?今の僕が言えたことじゃないけど、真澄ちゃんも案外次男のこと意識しているように見えるし、何これ僕邪魔じゃないか?あ、次男の恋路を邪魔してたんだった。今更か。

まあ救いなのは『お兄さん』って言葉かな。


「あ、別にチョロ松さんの撫でかたが嫌とかは無いですよ?六つ子なのに個性がよく出てるなと感心しただけですから」
「大丈夫わかってるよ。」


本当に嫌いじゃないんだよ?て、何回も言うからその必死さにくすりと笑いが込み上げる。


「ムッ……笑わなくても…」
「え!?ご、ごめん!」
「あはは、嘘ですよ。チョロ松さんの困った顔が見たくなっただけですから」


あれ?思ったよりもこの子、Sっ気あるな。そんな所も可愛いけど!

それに可愛いイタズラじゃないか。僕の困った顔が見たいって…僕の色んな表情が見たいというか…なーんて!凄くいい!いいよ!


「……カラ松さんの怪我の具合ってどうなんですか?」
「え、あ……大丈夫そうだよ。痛みもあまりないようだし、飯もよく食うし寝る。頑丈が取り柄だからアイツ」
「元気そうで良かったです。元気になったカラ松さんに早く会いたいです」


……ねえ、これって…どうなんだろう?


「真澄ちゃんはカラ松の事どう思ってるの?」
「カラ松さんの事ですか?」
「なんか……その、特別みたいな感じがして」


そう。これじゃあ真澄ちゃんの方もうちの次男が好きみたいだ。いや好きなんだろうけど、特別の好きってやつ。


「カラ松さんは私の最初の友達ですから」
「最初の友達…」
「今まで入院中は仲良くしても、退院と同時に縁が切れて、見舞いに来ると言ってくれる人はいませんでした。そんな中でカラ松さんだけは私に会いに来ると言ってくれたんです。だから少しだけ特別扱いになっちゃうんですよね」
「…なるほど」
「でもそれだけじゃなくて、チョロ松さん達とも出会えて、わたし幸せだなって思いました。だって色んな事を教えてくれるし、優しいから」


あ、この子僕を殺しにかかってきてる。神聖なオーラが滲み出ていて浄化されてこのまま召されそう。

本当にごめんなさい。下心があるんです。女の子に触れたいと思っててごめんなさい。

もう女神過ぎて崇拝したい気分だ。

とにかく特別扱いなのは最初の友達だから。ようは次男の不幸がタイミング良く幸運に変わって、上手くいった結果だ。この様子だと真澄ちゃんに恋愛感情とかを求めるのも難しい。だって初めての友達でああなんだよ?無理じゃん!恋愛になったとしても自覚がなければそれは恋に繋がらないよ。


チラリと彼女の方を向けばあどけない顔で微笑んで此方を見ていた。


クッ…可愛い。諦めるには惜しいくらいに、僕も彼女の事を気に入っている。



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