色松

□梅雨
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「カラ松、これ・・・」


一松は青と赤と緑のペンをカラ松に差し出した。
一瞬頭にはてなを浮かべるも理解したのかぱぁっと表情が明るくなりそのペンを受け取った。


「随分可愛いことを思いつくな」

「・・・うるさいよ」


ニコニコと一松に微笑みかけながら赤いペンの蓋を外し、照る照る坊主を1つ手に取ると何かを描き始める。
一松は黄色いペンを手に取り同じように何か描き始めた。



・・・ゴロゴロー・・・


「!?」

黄色いそれを書き終わった時、遠くの方で低い音が轟く。
一松はビクッと身体を震わせ窓の方を見遣る。その様子に気付いたのかカラ松は一松に視線を移す。


「どうかしたか?」

「ぁ、今・・・雷・・・」


ゴロゴロゴロ・・・!!


「ひっ・・・」


空がピカッと光ったかと思えば少しして再び音が響く。さっきよりも近いようだ。
カラ松もそれに気付いたようだが何食わぬ顔で赤いペンで照る照る坊主に顔を描き終えさせ一松の隣に座った。


「大丈夫だ、俺がいる」

肩を組むように抱き寄せその手で頭を撫でる。
一松は小さくコクリと頷くと黄色いペンで続きを描き始めた。
カラ松はその様子を見て今度は緑のペンを手に取る。




バリバリバリッッッ!!!!!!!!



「ひっぃ!!?無理無理無理・・・!」


一際明るく空が光った瞬間、空を割くような激しい音が落ちた。
一松は恐怖のあまりにカラ松にギュッと抱きつく。
カタカタと震える一松の身体を優しく包み込み背中をゆっくり撫でてやった。


「大丈夫、大丈夫だ一松・・・落ち着け
早くこれを作って飾ろう?そしたら止むかもしれないぞ」

瞳に涙をいっぱいに溜めながらこくんと頷くと胡坐をかいているカラ松の足にすっぽりとハマるように座った。


「ん?一松?」

「・・・怖いから、ここでやる」


後ろからは後頭部と耳くらいしか見えないがその耳が真っ赤に染まっているのが見える。カラ松はクス、と笑うと照る照る坊主を作り始めた。



















「できた・・・」

「いい出来だな!」


完成した照る照る坊主を並べ満足そうにカラ松は頷いた。
一松も頬を緩ませ嬉しそうにしている。

一松はカラ松の上から退くと6つの照る照る坊主手に窓際に行く。
一つずつカーテンレールに括りつけている後ろ姿を愛げに見つめ、一松の隣に行った。


「・・・出来た」

「この並びなのか」


照る照る坊主を見ると、赤、緑、青、紫、黄色、桃色の順に吊るされていた。

「・・・別に、いいでしょ」


フン、と笑う一松の顔に陽の光が降り注ぐ。
2人揃って窓の外を見れば、既に雨は止んでいて雲の切れ間から太陽が顔を覗かせていた。


「ほんとに晴れたな」

「ん、よかった・・・」


見つめ合ってニコリと笑い合う2人を陽の光が優しく包み込むように照らした。








(なにこれ!可愛い!)
(フッ、一松と作ったんだ)
(んで、お前がこの並びにしたわけ〜?)
(・・・それ、俺がやった)
(((え!?)))



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