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私はドゥ・マゴの常連客である。
店長さんと知り合いだし。
ちょっと大声だは言えないけど、こっそり割り引いてもらったりしてもらっている。(その対価として、最新の漫画の単行本の情報とかを言わされるが)
休みの日は、ここで一日本を読んだり、漫画を読んだり。
……今はお昼時とあってか、とても混んでいた。
帰ろうか悩むなぁ。
……今日は帰るか。
私はドゥ・マゴのテラス席に背を向けて歩き出す。すると、
「あ、紅桜さんじゃあないですか!」
店員の一人が私に声をかけてきた。
「どうも」
「こんにちは。今はお昼時で混んでるんですけど、相席でなら全然いけますよ。」
「……うーん。」
私は天秤に
“ドゥ・マゴでコーヒー飲み、パフェを食べながら本を読む”
のと
“家で、インスタントのコーヒーを飲み、カップアイスを食べながら本を読む”
のとをかける。
……バキッと音が鳴るぐらいドゥ・マゴの方が傾いたので、
「相席でもいいから案内してくれないか?」
と頼む。
すると、店員は嬉しそうに案内してくれた。
それは、すごく端っこで静かな席。
うん。とっても嬉しい。
けれど、その席には、とても身長の高い、なんかコート着た、ごっつい男がいた。何か書いている。
……全然うれしくない。
なんか、買ってもらったゲームが、すごく欲しかったものでとても嬉しかったんだけど、ゲーム禁止だったのを思い出したとき、の感じだ。
……ゲームかってもらったことないからわからないけど。
「あのお客様、ただいまお昼時で大変込み合っておりますので、相席をお願いしているんですけど……。」
「……構わない」
ごっつい男は私の方をちらりと見てそう言い、また何か書く作業に戻った。
……作文かな?
「じゃあ紅桜さん、どうせ注文コーヒーと、パフェですよね?」
「……あぁ、そうだ」
「ちょうどパフェ、紅桜さんの喜ぶ新しい味ができたんですよ。それを持ってきますね!」
「あぁ、頼む」
私は席に座り、ぐでーんと力を抜く。
……岸辺先生の連絡先を聞くのを忘れていたな。今思い出した。
私は大きなため息をついて、カバンから本を取り出し、読む。
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