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□13.5
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「何よ、急に呼び出して」


ある病院の一室に来た女。
女はまだ春だというのに、分厚い毛布をぐるぐると体に巻き付けて病室に入る。
その病室は凍えるほどに寒かった(・・・・・・・・・・)のだ。
冷気が外へと流れ込んで、廊下に白い煙を作っている。
女の吐く息は白くなっていた。


「絵が、出来上がったんで」

そう言ったのは、やせて体の細い男。
患者なのか、服は洋服などではなかった。
しかも、寒いというのに薄着で、目はギラギラと怪しく光っていた。



「そ、早く出して」


女は面倒くさいという風に言いながら、手を出す。
男は紙を差し出し、女に渡す。
が、すぐに離さなかった。


「ちょっと、離しなさいよ」

女は紙を破る勢いでグイグイと引っ張るが、離れない。

「離せって言ってんでしょ!」


女がそう怒鳴ると、男は、

「もう、離してますよ(・・・・・・)

と言った。
女は、訳がわからないという風に、手元を見る。


「きやぁああああああぁああっ!何よこれぇええぇえぇええええ!!」


女の手は、紙と一緒にくっついていた。いや、凍らされていた(・・・・・・・)と言う方が正しいか。
女は焦ったように手を動かして見るが、手を動かしていると言う感覚、さえなかった。
それほどまでになっていたのだ。



「俺の作品をネットで叩いてましたよね。絵が汚いクソ作品だって……。
……こっちは死に物狂いで毎週毎週原稿を描いているのに……」


男がピタッと女の胸の中心、ちょうど心臓のある場所に、手を置く。

「何、何よ……。な、に、」


「何も」


ビキビキバキッ


と言う音を立てて、女が氷のように、固まってしまう(・・・・・・・)
しかし、男がもう一度触れると、嘘のように元に戻った。――ただし、意識の無い、心臓の止まった状態でなのだが。


ごとり、と音を立てて倒れ、動かない女。
男は、冷ややかな目で女を見、ナースコールを押した。



「……人じゃ無い、俺は、人じゃ無い、何か、力を持っている……。そうだろ?」







答える人は、誰もいない。


だが、男の後ろにいた、何か(・・)、が、男を、肯定するかのように、纏わりついていた。











To be continued……→
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