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「うーん、でもページ数大丈夫ですかね?」
「何とかなるだろ。」
「……紅桜さん……。」
彼は少しうつむいて、そのままで私の名前を呼ぶ。
……何か私悪いことを言っただろうか。
何とかなるだろって、無責任すぎたか?
そう思って何か言葉をかけようとしたら、バッと私の方を向いて、
「めっちゃいいですね!やっぱり天才だなぁ〜!」
といって私を軽く抱きしめた。
「やめてくれ。病院内だぞ。」
「え、わ、す、すみません……。調子乗って。」
彼はすっと私を離して、下書きに私の言ったことを書き込む。
「……そうだこれ、私の電話番号だ。……さすがにアポなしで来られると困る日とかあるだろ。」
私は名刺を彼に渡す。すると、
「全然そんなことないですよ。……俺紅桜さんが居る時の方が、調子いいし。でも一応受け取っておきますね。」
といって、受け取る彼は、とてもうれしそうな顔をしていた。
「あ、もうすぐ検査の時間だ……。」
「そうか、じゃあそろそろ……」
「あ、帰らないでください!」
私は彼にぐっと手を握られる。
「……ギリギリまで居て下さい……。」
……やはりこの不気味な部屋で一人でいるのは寂しいのだろうか。
それとも、人が近くにいると、安心するのだろうか。
私は立ち上がろうとしていた足を踏みとどめて、椅子に座る。
「……そうだ、紅桜さん」
「……ん?」
私は、私のことをしっかり見つめる彼の方をしっかり見る。
どことなく嬉しそうだ。
「……もう少ししたら俺、俺っ」
「……どうしたんだ。」
もしかして、余命宣告されたのか?と心の中で不安が生まれる。
それならいやだ。
けど、うれしそうな顔で余命宣告なんてもんを言うものか?と、うだうだ考えていると、
「俺、あと一年頑張ったら、たっ、退院できるかもしれないって言われたんですよ!!一生病院暮らしだって言われた俺が!外の世界に!出れるかもしれないんですよ!」
「……本当か!?」
「本当ですよ!!」
私はおもいっきり彼を抱きしめた。
彼も私をおもいっきり抱きしめ返してくれた。
「たぶん車いすの生活になるだろうけど、って。けど外に出れて、外で暮らせるなら全然いい……っ!俺両親居ないから、病院の先生がどっか住むところ見つけてくれるらしいです。」
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