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「悪いな、原稿に集中していて出れなかったんだ。入ってくれ。」
岸辺先生がドアを開けて、入るように促してきた。
……変なヘアバンドに、へそ出しの服着てる。お腹冷えないのかな。……冷えないから、来てるのか。
「何僕のことじろじろ見てるんだ。早く入ってくれないか。」
「……失礼しました。お邪魔します」
私は」岸辺先生の家に入る。
……なんか居心地悪いなぁ。
禍々しいっていうか、なんていうか。
……こんなの病院の方がましだぞ。
あぁ、帰りたい。ドゥ・マゴのコーヒー飲みたい。
「僕は紅茶を淹れてくるから、2階へ上がっておいてくれ」
「わかりました」
私はパンプスを脱いで、ちゃんとそろえてから入る。
……2階か。
あんまり長居したくないんだけどな。
私は階段を上がって、2階の岸辺先生の仕事場になっている部屋に入る。
……資料とかわりと綺麗に置かれているな。まめな性格なのかな。
私は部屋の端っこに座る。
さっき書いた紙、もったいなかったな。書かなきゃよかった。
……岸辺先生はリアリティーのある絵や表現がすごいけど、あれってどうやって出しているんだろうなぁ。あんまりリアリティーのある絵だと、気持ち悪がられて、若い年齢の人に受けないんだよなぁ。
実際、十代にあまり支持はない。
きっと絵が濃いとか、内容画グロくて苦手、とかいう理由なんだろうな。
「おい、何端っこに座ってるんだ。」
「……申し訳ありません。」
「別に、怒ってるわけじゃあない。」
岸辺先生が私に紅茶を渡してくれた。
……なんか変なにおいがする。
この臭いって、何かの薬かな。
「どうしたんだ、固まって。紅茶は嫌いだったか?」
「……岸辺先生、紅茶を出してくださるのはとてもありがたいのですが、何か紅茶に混ぜましたか?」
私は一口飲もうとする。
すると岸辺先生は慌てたように私の手をつかんだ。
……やっぱり、何か入れてる。
「死んでしまうような毒ではないにしても、何か体に害のある薬が入っているんですよね。」
「どうしてわかった?薬が入っているって。」
「……変なにおいがしたんで。紅茶の茶葉以外の匂いが。」
「……頭がキレるってのは本当らしいな。」
「鼻がきくやつの間違いじゃあないですか?」
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