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「フッ、面白い奴だな。」
……面白いのか?
私は少し首をかしげつつも、クッキーを食べる。
「……あぁそうだ、仕事の話をしておかないとな。」
私はクッキーを食べる手を止めて、カバンから手帳とペンを出す。
「……そんな書くことはないぞ。……基本僕の所には来なくていい。原稿のやり取りはFAXでもできるからな。あぁ、あと変に差し入れとかもしなくていい。僕が呼んだときだけ、来てくれたらいい。」
「あの、」
「後、原稿の受け渡しは、基本外でやる。」
「……はい。」
私は家にFAXが無いことを言おうと思ったのだが、言うタイミングを逃してしまった。
……FAX高いもん。買えない。
欲しいけど。……因みに、私の家には、固定電話がない。
家にある通信手段は、電話だけ。
いちいち電話線引くのめんどくさいし、仕事辞めさせられたら、ここから去るつもりでいるから。
「……あの」
「なんだ。」
「……家にFAXないんです。」
「はぁ?買えばいいだろ?」
「……高いから手が出ません。」
「今のご時世、固定電話についてるだろ?」
「家に固定電話はないです」
「……ほんとに言ってるのか?」
「本当に言ってます」
私がそう返すと、岸辺先生は呆れたような、拍子抜けしたような笑い声をあげた。
「……本当に君は面白い奴だな。……そういえば、驚かないのか?」
「何にですか?」
「僕のやり方にさ。他の漫画家はそうじゃないだろ?担当をこんな使い方したりしない。そうだろ?」
「……そうなんですかね?」
「どういうことだ?」
岸辺先生が不思議そうな顔をして私の方を見てくる。
手にしっかりメモ帳とペンを持って。
私はそれを見てため息をついてから、
「私はまだ2人の人しか担当を持った事がありません。経験も未熟だし。私の扱いについては好きにしてくださって結構です。気に入らなければ切ってくださっても結構ですし、思いっきり当たってくださってもいいです。それで先生が良い作品を言い気分で描けるなら。担当の仕事は、先生達に良い漫画を良い気分で描いてもらうためのお手伝いをすることだと思ってますから。」
と言うと、岸辺先生は肩をプルプルと震わせて、大きい声で、
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