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私がそう言うと、空条さんはさっと手帳をしまい、
「やれやれだぜ。」
と言った。
やれやれだぜ。って、こっちがやれやれだぜ。なんだけどな。
「あんた、ずいぶんと頭がキレるな。探偵か何かやっているのか?」
「探偵をやっていなくても、それくらい予想はつくと思いますけど」
私はパフェを一口食べながら答える。
……意外にあっさりしていておいしい。
甘さ控えめでおいしい。
そして空条さんはカバンに作文用紙をなおして、コーヒーをすする。
なんだか様になっていて格好いい。
女の人がいたんなら
「キャーッ!何あの人、超カッコイイィィィ!」
って言ってるんだろうな。
「……あんた、海が好きなのか?」
「……はい?……まぁ、好きですけど。」
空条さんの視線の先には、私が間違って買った海洋生物の本があった。
「……海の生物で、何が好きだ?」
「え、あぁ、えぇっと……」
……なんでこんな質問するんだろう。
と少し疑問に思いつつも
「イルカと、タツノオトシゴが好きです。」
と言うと、
「そうか。」
と言われただけだった。
そして、
「その本、」
と言っていたので、空条さんに本を渡す。
「ほ、欲しいならどうぞ。別に私もういりませんから。……へ、変に思うならいいです。受け取らなくて。」
私が早口でそう言うと、男の人はきょとんとした顔をし、
「……怒っているのか?」
と聞いてきた。
……え、ぇえ、えぇっと、
「違います。……つい早口になっただけで。はじめて会った人に本を渡すなんて、おかしい、ですよね。普通に考えたら。浅慮でした。……申し訳ありませ
「いや、悪かった。その、本は、受け取っていいなら、受け取る。」
少し恥ずかしそうに防止のつばを下げて、コーヒーを飲む、男の人じゃなくて、空条さん。
「えぇと、じゃあ受け取ってください。もう返さなくて結構ですから。」
私は軽く深呼吸をして、パフェを食べる。
早くしないと、アイスが溶ける。
パクパクと一生懸命食べていると、空条さんが息をのんだような声を出したので、横を見てみると、背表紙に書かれている値段に驚いていた。
……1万円の本だから、驚いて当然だろう。
「……この本、」
「……どうかしましたか」
私は知らないふりをしてパフェを食べ進める。
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