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残りはあと半分だった。
「いい本だな。本当に返さなくていいのか?」
……あ、そっちか。
「ええ。返さなくていいです。」
私は3分の1余ったパフェを見ながら考える。
……もう、一息に食べてしまうか、ちょっと空条さんにあげたほうがいいのか。
……空条さん、甘いの好きじゃなさそうなんだよなぁ。顔的に。
私は結局パフェを全部食べて、ちゃんと両手を合わせて、
「ごちそうさまでした」
と言ってから、カバンからもう一冊本を出す。
そして読み始めると、ふと岸辺先生の発言が脳内に再生された。
“今すぐ本にして見てやりたいところだが、今日はよしておこう”
……本にする?本にして見る?……?
「本にするか……。」
私がボソッとつぶやくと、空条さんはピクリと反応した。
しかし、すぐ日本の世界に戻ってしまった。
……何に反応したんだろう。
私は少し気になったが、私もすぐの本の世界にと入り込む。
やっぱり本はいい。簡単に非日常を体感できるから。
……1度でいいから、非日常を味わってみたいな。
そう思いながら、本の世界に入って、コーヒーをおかわりして、何時間がたっただろうか。
私はふと時間が気になったので時計を見ると、もう夕方の5時前だった。
……帰らないと。
私はパフェとコーヒーの値段の描かれた紙を持って、立ち上がろうとすると空条さんに呼び止められた。
「……なんでしょうか。」
「連絡先、聞いていいか?」
「いいですよ」
私はさらさらっと携帯番号を書いて、空条さんに渡す。
「……それでは、失礼します」
「あぁ」
私はお会計をしている時、とても気分がよかった。
……きっとあの人のおかげだろうだろうな。
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