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「僕だ」
「……あぁ、岸辺先生ですか。お早うございます。」
「ああ、お早う」
僕がお早うと言った後、紅桜は軽くせき込んだ。
……どうしたんだろうか。
「どうしたんだせき込んで。昨日はあんなに元気だったじゃないか。」
と聞くと
「今の今まで吐いてたんですよ。……昨日会社の飲み会で、変なものを食べさせられて。すみません。」
と言った。
……変な食べ物か。どんな味なんだろう。
吐き気を催すほどだから、そんなにまずいものなのか?
紅桜は僕が考えていることが分かったのか、それとも、元より言うつもりでいたのか、
「腐った卵とリンゴを食べさせられたんですよ。昨日の記憶がなくなるぐらいまずかったです。」
と言った。
そこで疑問がいくつかふっと浮かんだが、また後でいいと思い、
「今日来れるか?」
と聞く。
「……ええ、行けますよ。何時頃伺えばいいでしょうか?」
「君の好きな時間でいい。吐き気が治まるまでくるなよ。僕の家で吐かれたら困るからな。」
「分かりました。……あの、」
「なんだ?」
「行くの遅くなったらすみません。」
「構わない。……待ってる。」
「はい。失礼します」
紅桜は電話をブチッと切った。
……ああ、来るのが楽しみだなぁ。
紅桜がいつ来てもいいように僕は、紅茶の茶葉と、昨日のチョコクッキーを用意しておくのだった。
                                                            💘
ピンポーン
と言う聞こえがいい音が聞こえたので、出てみると、康一君だった。少し焦った様子で僕の方を見ている。
「何の用だ、康一君」
と僕が聞くと、
「この女の人が具合悪そうに座り込んでたもんで、大丈夫ですか?って聞いたら、フラフラした足取りで歩くから、こっそりついてきてしまったんです。」
と言った。……やはり康一君はいいなぁ。
紅桜は康一君にぺこりと頭を下げ、
「心配をかけてすまなかった。学校、あるんだろう?速く行っておいで。」
と言う。
すると康一君は恥ずかしそうに頬を染めて、
「は、はい!いっ、行ってきます!」
と言って去ってしまった。
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