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「……本体も、捕まえられると思うか?その時、君一人で動いて、本体も、確実に捕まえられるのか?」
ぐっ、と返答に困ってしまう康一。
けど、
「確実に捕まえることができなくても!何か行動を起こしていれば、証拠を掴めたかもしれないじゃあないですか!僕のエコーズの射程距離なら……」
と、言葉をつなげる。
けどそれも、どんどん小さくなっていく。
承太郎さんの纏う空気が変わったからだ。
「……相手は、康一君のスタンドと同じように、ある程度離れていても使えるスタンドだ。彼女が倒れてからすぐにあたりを見回したが、本体はどこにもいなかった。……そして、そのスタンドが、弓と矢を使っていた。」
ぎりっと音が鳴るくらい、拳を握りしめる承太郎さん。
「弓と矢は今、SPW財団に預けているはず……。他の人間が勝手に、持ち出しは絶対にできないはずだ。」
「……ホントに弓と矢だったんスか?ほかの何かと見間違えたとか……。」
「いや、あれは弓と矢だった。」
……承太郎さんがそう言うんだから、そうなんだろう。
「……もしかして、SPW財団の中に、スタンド使いが……。」
「そうかもしれないな。……何のため、調べてみる。」
……弓と矢で、またスタンド使いが増えていく。
そして俺達と、いずれひかれあう。
――スタンド使いはスタンド使いにひかれあう――
背中にぞくりと寒気みたいなもんが走った。
「……仗助、康一君、億泰、一つ頼みたいことがある。」
「……なんスか。」
「彼女が弓と矢に射られたということは、いつスタンド能力が目覚めてもおかしくないということだ。……もし街中で彼女を見かけたら、声をかけるようにしてくれ。」
「……スタンドの事は……」
「俺から話す。日を改めて。」
「それまでは言わないでいいんスね。」
「そうしてくれ。」
承太郎さんはそう言って、そのあと話すことはなかった。俺は、一言も口を開かなかった、億泰の方を見る。
下を向いて、表情を窺うことはできなかったが、何か考え込んでいるようだった。
……と、
「……っ、はぁ……。」
という声が聞こえてきたので、身を乗り出すと、紅桜さんが目をうっすらと開けて、荒く呼吸をしていた。
「はぁ、はぁっ、あ、れ、……。血だらけだった、はずなのに……。」
「黄、黄、気のせいっスよ、きっと。さ、帰りましょ。……っていうか帰んねぇと、親に怒られるつーか……。」
「……すまない。急ぐ。」
紅桜さんは車のエンジンをかけて、アクセルを踏んだ。
空はもう夕闇に染まっていた。
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