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「……いきなりの事でわからない、ですよね」
「まぁ、大丈夫だ。……君のスタンド?は、エコーズとかいう名前だろ?」
「えぇ!?何で知ってるんですか!?」
康一君が驚く。
仗助、億泰も驚いているようだった。
「……昨日聞いたから、それかなぁって」
私は恥ずかしくなったので、お冷を飲む。
「……すごいっスね、耳」
「そうか?」
「そうっスよ」
「……ありがとう、かな」
……スタンドか。名前の由来は何だろう。
スタンドアップじゃないだろ。
スタンドバイミー、Stand by meか。
『傍に立つ』か。
……はぁ、なんか次元が。
「いきなりの事で、こんがらがるかも知んねぇけどよぉ、そういうときってのは、考えねぇ方が楽なんだぜ!」
……それができたら苦労はしない。
私は時計を見る。
もう5時になっていた。
ぼちぼち帰ろうかな。
「やっべ、今日は速く帰んねぇと殺される!あ、承太郎さんから連絡行くと思うんで!それじゃあ!」
仗助はそう言って、康一君と億泰を連れて、あわただしく帰って行った。
そのあとに私は、ゆっくりと店を出る。
外はまだ雨が降っていて。
私は折り畳み傘をさして、歩く。

パシャパシャ、ピチャピチャ、ザァザァ、ボタボタ

いつもなら、あまり気にしない音も気にしてしまう。
いつもなら、狭い世界が、少し広くなったように感じる。

スタンド

いつか、承太郎さんに詳しく聞かされるであろう言葉。
私はそれを少し楽しみにして、帰路を急ぐ。
……そのあとを、“スタンド”を使う人間が、ヒタヒタと、周りに姿を溶け込ませて、音もたてずに、歩いているのに気づかないまま。





「紅桜たぁん」
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