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「そうなんですか、って君なぁ……。」
「昨日ずっと寝てたんです。調子優れなくて。」
……半分ウソ、半分ホント。
昨日4人を送ってから、すぐにお風呂に入って寝た。
ピンクダークの少年を読みたかったけれど、そんな気力はなかった。
というか、血みどろになっていたはずなのに、血みどろじゃなくなっていたことにものすごく引っ掛かりを感じて、寝れたようなもんじゃなかったけれど。
「……別に、君の様子が気になったとかじゃないからな。この草みたいなののほどき方を聞こうと思ったんだよ。」
……岸辺先生も、半分ウソ、半分ホントなんだろうな。
そっぽを向いて、話をしているから。
「……岸辺先生は、シャワー派ですか、つかる派ですか、お風呂」
「……は?」
「答えて下さい」
「……基本シャワーだが……」
「今日はぜひ肩まで浸かって100まで数えながら入ってくださいね。」
「どうして」
「さぁ?けど、そうした方がいいですよ」
……岸辺先生についているアレは、草なんかじゃなくて、お湯につけると緩くなるゴム。
それを草っぽく加工しているだけだ。
あの時、先生は岸辺先生の職業を見抜いて、草っぽいゴムをこっそり着けていた。
あの時の先生は、とても嬉しそうだった。
「……わかったよ。今日は、100まで浸かってやる。」
「……毎日そうしないと、そこからただれて、手が使い物にならなくなるかもしれませんよ。」
「フン、そんなウソの話……」
私はグイッと袖をめくり、岸辺先生に腕を見せる。
すると岸辺先生は「うわぁっ」と言って、後ずさった。
私の腕にあるのは、焼けてただれたような傷。
偽物じゃなくて、本物だ。
「……本当に、こうなるのか……?」
「こうなるんじゃないんですかね?」
「……触っていいか?」
「いいですよ。」
岸辺先生は、ビクビクしながら、傷に触る。
……私の傷に触る人なんて、先生以外にいなかったのに。
「……いつ、こうなったんだ?」
「さぁ」
私は適当にはぐらかす。
あまり知られたくない。この傷がどうやってついたのかを。
「夏とかどうしてるんだしてるんだ?」
「半袖着ないで、長そで着てます。」
「へぇ。暑くないのか?」
「UV対策だと思えば、そんなに。」
「気持ちの問題か。」
「そうですね。」
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