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……失礼な。まぁいいけど。
私は岸辺先生と仗助を交互に見てから、
「じゃんけんして、勝った方のイーブンを聞きますよ」
というと、2人そろって、
「「最初はグーッ、じゃんけんほい!」」
と言った。
岸辺先生がグー。
仗助がパー。
試合終了のゴングがカンカンと頭の中で鳴る。
「……じゃあ、仗助が勝ったから……ついてくるんだな、取材」
「はいッス!……あ、あと康一と億泰も連れて行っていいっスか?」
「仗助がそう言うなら」
仗助は小さくガッツポーズをしていて、岸辺先生は少しだけイジけていた。
給食で、デザートのじゃんけんをして、負けて拗ねている小学生みたいだ。
「岸辺先生の邪魔はしないように言っておきますから」
「邪魔してきたら、君の責任だからな」
「わかりました」
この人、本当に大人かなぁ?
「あ、雨やんでる」
仗助がそう言うので空を見ると、雨はやんでいて、空は変な色になっていた。
雨上がりの空だから、変に見える。
「僕は帰るからな。……来週の金曜だぞ」
「わかりました」
「じゃあな」
「はい。気を付けて」
岸辺先生は、私と仗助の方を見、鼻を鳴らして行ってしまった。
「……あんな奴の担当とかになって、しんどくないんスか〜?」
と仗助が聞いてくるので、
「ん……どうだろうな。まだ日が浅い、だろうから何とも言えないが、優しい人だと思うぞ」
と返すと、「そうっスか〜?」と不思議そうに言ってくる。
「……あ、今……何時っスか?」
「……んと、あ、携帯の充電がないから、わからない」
「けどもう遅い時間っすよね」
「そうだな」
「早く帰らないと」
「怒られるな」
私がそう言うと、仗助は動きを数十秒間ほど、ピッタァアアと止めて、
「速く帰んねぇと殺されるっ!」
といって、私の腕を引きながら走り出す仗助。
「おい、なんで引っ張るんだ」
「一緒に帰るんスよ!」
「どうして」
「……怒られないかなーって」
「怒られるように仕向けてやろうか」
「それだけは勘弁してくださいよぉ〜ッ!」
仗助は大声で喚きながら走る。

私ぐらいこういう事があるのは楽しいものだな、と感じた。
この時間が、もっと続けばな……。
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