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「初めて来ました……。いままで僕は、失踪事件を主に捜査していたんで……」
「どうして今回、この事件に?」
「西音寺さんが、優秀で、度胸があるからって言って、無理矢理連れてくてくださったんですよ……」
「何かしたのか?」
「……人質を助けるために、海に飛び込んだり、燃てる家に入ったりぐらいならしたことありますけど……」
こいつ凄いな。凄い度胸のあるやつだ。
僕はメモに残しておく。
……人質を助けるために、火の中水の中、か。
なかなか正義感のあるやつだな。
いいぞ、いい素材になる。
「あ、ここです」
そう言ってガチャガチャと扉の鍵を開け、中へと入って行く野田。
僕も中へと入ってみる。
一段と冷気が強くなっていて、ブルブルと手が震えそうだ。
「……あの、少しいいか?」
「はい、何、ですか?」
紅桜が白い息を吐きながら、
「ここにいた、山田福吉という人は、今どこに?」
と聞く。
……そういえば、僕の前に担当していた奴なんだっけ。
「えぇと、別に部屋にいますよ?確か、2階の……。聞いて来ましょうか?」
「いや、大丈夫だ。2階に居るんなら、会えそうだし」
「お知り合いなんですか?」
「え、あぁ、そうなんだ」
紅桜は適当に言葉を濁し、部屋の中を見て回る。
僕も部屋の中を注意深く見て回る。
あの女、えぇと、横瀬美奈子が死んでいたと思われる位置には、ロープでマークされていた。
「えぇと、第一発見者は、山田福吉さんでした。彼女と原稿のやり取りをして居る時に、急に倒れた、と、
言っていましたけど、どうも記憶があやふやみたいで、正確な事はわかっていません」
……精神的に深く傷ついて居るから、思い出せないのか。
目に前で人が死んだなら、誰でもそうなるか。
「部屋のものが、全部凍ってますね」
「本当だな。カチコチに凍ってる」
僕は野田が仗助の奴と話している間に、少しだけ触って見る。
……かなり硬い。氷のようだ。
…………まさか、スタンドで凍らされた、とかは……。
ないない、絶対にないだろう。
きっと。
「死因は凍死です。ご遺体も綺麗なままでしたから、えぇと、その、死因は凍死で確定です」
「そうか……。外傷は?」
「ありませんでした。あ、でも……」
野田はそう言って、ゴソゴソとポケットを見る。
そして、一枚の写真を出して来た。
「これ、ご遺体の写真なんですけど、手元の部分、原稿が握られてるんですよ。というか、くっついていたんです。遺体の手に(・・・・・)
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