main

□14
2ページ/11ページ

午前9時。
僕は自分の家の前でスケッチブックを肩に下げ、カメラやなんやらの機材、そしてカバンを持って、立っている。
いつもの僕なら、スケッチブックと筆記用具で良いんだが、今回は嫌がらせもかねての大荷物だ。
カメラなんて、本当は使わない。
けど、あいつらが一緒に来るというイライラから、あいつらに何か僕の物を持たせないといけないと思ったのだ。
昨日安く仕入れたカメラだ。
壊れても問題はない。
「遅いなぁ……」
僕は腕時計を見る。
9時15分。
約束の時間より5分遅れてるじゃあないか。
速く来いよ。
と思っていると、黒の軽四車が家の前に着いた。
運転席の扉が開き、小走りで、紅桜がやってきた。
ビシッとスーツでキメている。いつものように。
けれど、少し表情が暗かった。
「遅いぞ」
「……すみません、仕事の関係で」
「仕事?どういうことだ?」
「詳しくは車内で話をします。S市の大学病院にも関係する話なので」
彼女は僕からカメラなどの機材を取って、車の後ろに乗せに行く。
……今から行く病院にも関係ある……か。
いいネタになりそうだなぁ〜ッ!
僕は心底ウキウキしながら車に乗る。
後ろの席では仗助、康一君、億泰が、何か話しながら車に乗っていた。
「あ、露伴先生、お早うございます」
「お早う」
「……今日、一緒に行かせてもらって、大丈夫なんですか?」
康一君は、少し心配そうな声で僕に聞いてくる。
紅桜が、運転席の扉を開け、運転席に座るのを見てから、
「……康一君は良いが、他のやつは嫌だな」
と言う。
すると仗助と億泰が、何か言おうと口を開きかけた。
が、
「静かにしてくれませんか」
という紅桜の一言で、その口を閉じた。
……電話中らしい。
「……はい、わかりました。…………まぁ、されてましたけど………言うつもりはないです。
……どうしてって、言ったって仕方ないですし。………えぇ、そのようなものです。
……編集長は、これからどうするんですか?………………そうですか。……はい、では明日。……はい。……失礼します」
紅桜は通話を終わらせて、黙ってエンジンをかける。
仗助と億泰は顔を見合わせて、首をひねった。
紅桜の周りにまとわりつく、オーラみたいなのが、いつも以上に暗いものだったからだ。
「紅桜さん、何かあったんですか?」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ