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凍った木の棒が壁にしっかりと突き刺さっていた。
ドアの方を見ると、半径3pくらいの穴が空いていた。
その穴から、ヒョォォォォオオッという音とともに、冷気が流れてくる。
ブルリと、知らず知らずのうちに、体が震えてしまう。
クソッ……カイロが意味ないじゃあないか……。
僕はブルブルと震えながらも、穴に近付いて中を覗く。
……よく見えない。
と、急に足を引っ張られてので、僕はステーンと無様に転んでしまう。
分厚い毛布を巻いていたから、痛くなかったが……。
僕は仗助の方を、ギロリと睨む。
「なッ、俺じゃあないっスよぉ〜!」
「いいや、絶対君だね」
「紅桜さんっスよぉ〜ッ」
「ふうん。君、大人を盾に使うのか?」
「違っ……俺は本当のことを言って……」
仗助が慌てたように紅桜の方を見る。
すると紅桜は、
「岸辺先生」
と、僕の名前をつぶやいた。
僕は紅桜の方を見る。
何か、考えついたような、そんな顔をしていた。
「……岸辺先生」
「なんだよ。2回も呼ばなくていい」
「この病室に、私が入って出てこなくなったら……。逃げてくださいね」
「は?」
「それでは」
紅桜は、毛布をぎゅっと握りしめて、病室の扉を開けて、中へ入って行ってしまった。
「ッ、紅桜さん!何してんスか!危ないっスよ!」
ガンガンと扉をたたく仗助。だが、中からは何も帰ってこない。
帰ってくるのは、叩く音だけ。
「やめとけ、仗助」
僕がそう言うと、仗助の奴は、
「何言ってんだよ!もし中にいる奴が、横何とかを殺した奴だったら?殺しをやるぐらい危ない奴だったら!?どうすんだよ!」
と、ブチ切れ寸前だった。
「……紅桜は、何か考えがあって、ああしたんだ。大丈夫だろう」
どうして僕の口から、こんな言葉が出てきたのか分からない。
ただ、心の底からそう思ったのだ。
大丈夫だ、と。
「……チッ」
仗助の奴は、軽く舌打ちをして。ドアをガンッと強く蹴る。
すると、
仗助の靴が、先の方から凍り始めていた。
バキバキバキッという、音を立てて。
「おい!右足の靴を脱げッ!速くッ!」
「あ?」
「早く脱げッ!死にたいのかッ!」
僕が大声でそう言うと、仗助は右足を見て、慌てて靴を脱ぐ。
バキバキ
と、音を立てながら、靴はガチガチに凍ってしまった。
「……嘘だろ……?」
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